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第1回:安心しろ,絶対に間に合わない(上) 

山田 剛良=日経エレクトロニクス
2011/11/17 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2006年11月6日号 、pp.132~134 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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開発が決まったころのモックアップ。ボタンの数やキーボードの形状など細かい部分を除くと,最終製品とほとんど変わらない
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 「半年足らずで15万台を販売できた」――。2006年6月6日に開かれた「W-ZERO3」の新機種発表会で,壇上のウィルコム 常務執行役員の土橋匡は誇らしげに発表した。驚く記者たちを見ながら,同社 営業開発部 企画マーケティンググループ 課長補佐の須永康弘は痛快な気分だった。須永は企画段階からこの製品を担当するウィルコム側の中心人物の一人である。

 W-ZERO3はウィルコムがシャープ,米Microsoft Corp.と共同で開発した携帯型情報機器(PDA)である。ウィルコムとネットインデックスが開発した「W-SIM(ウィルコム・シム)」と呼ぶPHS通信モジュールを使って,音声電話とデータ通信の機能を提供する。いわゆる「スマートフォン」と呼ばれるジャンルに入る製品である。

ウィルコムの須永康弘氏
ウィルコムの須永康弘氏

 W-ZERO3が初めて世に出た場は,2005年10月20日にウィルコムが開いた発表会見だった。この時点では2005年度内に10万台出荷するという同社の狙いに懐疑的な見方が多かった。「PDAは3万台売れれば御の字。10万台の目標は大きすぎるのでは?」といった趣旨の質問が記者から出たほどだ。しかし須永の考えは違っていた。「W-ZERO3は普通のPDAとは異なる。潜在ユーザーは数百万人。10万台の販売は堅い」。

 現実は須永の見込み以上だった。予想以上の消費者がW-ZERO3の最初のモデル「WS003SH」に殺到した。2005年12月14日に発売されるや各地で品切れ騒ぎを引き起こすヒット商品になった。発売後1カ月で5万台を売り,約半年後の2006年5月末には15万台を突破した。

 ウィルコムは2006年6月に追加したWS003SHの機能強化版「WS004SH」,同年7月に追加した小型版「WS007SH」を加えた3機種の合計で2006年度内に累計50万台を売ると意気軒昂けんこうだ。この成功を見て,NTTドコモやソフトバンクモバイルといった携帯電話事業者も同種の製品をラインアップに追加し始めた。W-ZERO3は国内にスマートフォン市場を切り開いた製品なのである。

データ通信だけでは限界

 そもそもの発端は2004年末までさかのぼる。12月初めのある日,シャープのPDA部門の担当者が,須永たちがいるウィルコムの企画部門を訪ねてきた。PDA「ザウルス」の新製品に,ウィルコムのPHSデータ通信カードを内蔵したいという打診だった。

 シャープは当時,2004年10月に発売したザウルス「SL-C3000」から,内蔵する1インチHDDを取り除いた普及版(後の「SL-C1000」)の開発を進めていた。HDDを除いて空いたスペースにPHSデータ通信カードを入れようと考えたのである。

 しかしこの提案に,須永たちは難色を示す。シャープが持ち込んだアイデアは従来の製品の延長線上にあり,ウィルコムのユーザー層を大きく広げるとは到底思えなかったのだ。

 それまで須永たちはシャープと共同で,軽量ノート・パソコンやPDAと,PHSデータ通信カードを組み合わせた販売キャンペーンを実施していた。携帯機器でデータ通信を使うユーザーを増やすことが,ウィルコムのユーザー増につながると考えていたからだ。実際,キャンペーンは好評で順調に加入者を増やせた。ところが,同時に限界も見えてきた。

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