Kinectは、米Microsoft社の家庭用ゲーム機「Xbox360」のジェスチャー入力コントローラとして、同社が2010年11月に発売した周辺機器である(図1)。特徴は、ゲームをプレーする際にコントローラを持つ必要がないことだ。Kinectがプレーヤーやその骨格を認識することで、プレーヤーの体全体がコントローラになり、体を動かすことでゲームをプレーできる。このようなユーザー・インタフェースをNUI(Natural User Interface)やNI(Natural Interaction)と呼ぶ。

図1 Microsoft社のジェスチャー入力コントローラ「Kinect」
もともとは同社の家庭用ゲーム機「Xbox360」で利用する周辺機器だが、パソコンに接続して利用することもできる。
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 Kinectは2011年3月の時点で全世界での販売台数が1000万台を突破した。発売開始から2カ月で800万台の出荷台数を記録したことは、ギネス世界記録に認定されている。2011年6月に開催された世界最大級のビデオ・ゲーム展示会「Electronic Entertainment Expo(E3) 2011」では、Xbox向けタイトルの大半がKinectに対応しており、Microsoft社がいかにKinectに力を入れているかがうかがえた。Kinectはもはやジェスチャー入力デバイスのデファクト・スタンダードと言っていい。

 KinectはMicrosoft社の製品であるため、他の企業が自社製品に組み込むのには無理がある。ただ、デファクト・スタンダードとも言えるKinectをどのように利用するかを学ぶことは、ジェスチャー入力に対応した家電などの機器を開発する際に必ず役立つはずだ。

パソコンで利用可能に

図2 Kinectとパソコンを接続するケーブル
このケーブルを利用することで、パソコンからKinectを利用できる。Kinectの単体製品には付属するが、Xbox 360とKinectのセット製品には付属しない。
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 Kinectの単体製品には、USB接続のためのケーブルが付属している(図2、Xbox 360とKinectのセット製品では別売)。本来は旧XboxにKinectを接続するためのものだが、これを利用すればパソコンのUSB端子とも接続できる。

 発売当初はMicrosoft社からの正式なSDK(Software Development Kit)のリリースがアナウンスされていなかったため、米Adafruit Industries社が2000米ドルの賞金を提供し、Kinectをパソコンから動作させるためのドライバを公募した。

 結果的にHector Martin氏が公開した「libfreenect」がAdafruit社の要求を満たし、同氏は増額も含めた3000米ドルを手にした。その後、2011年1月にはKinectをMicrosoft社と共同開発したイスラエルPrimeSense社などが中心になってNIデバイス向けライブラリ「OpenNI」を公開した。

 Kinectは、本来はXboxでしか利用できない。「Xbox 360 Kinectセンサー取扱説明書」の13ページには、「お客様は、ご自身のXboxまたはXbox 360においてのみ、Kinectセンサーを使用し、その他のいかなる機器(例えば、パソコン、その他のビデオゲーム機等)と共に使用してはなりません」と記述されている。