測位技術は従来、カーナビなど一部の機器での利用にとどまっていた。しかし最近では、iPhoneやAndroid端末といったスマートフォンの普及によって一気に用途が拡大する兆しが見えてきた。スマートフォンは、位置を測定できるGPSや各種センサを搭載している上に、画面が大きく地図などを表示しやすいからだ。
スマートフォンの普及によってWebサービスで位置情報を利用する人が急増し、それに群がるように開発資金やアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)の開発者が位置情報を使ったサービス分野に集まる。それにより、さらにユーザーが増える─。こうした好循環に入ろうとしているのだ。
この大波が及ぶのは、消費者向けのサービスだけではない。これまでゆっくりと位置情報の利用を広げてきた産業機器にもなだれ込もうとしている(図1)。スマートフォンの普及をキッカケに、民生機器と産業機器が相互に影響を及ぼしながら進化を遂げていく。その先には、高精度な測位をどこでも安価に実現できる新たな世界が待っている。位置情報を利用する機器の市場は大幅に拡大し、新しいサービスが続々と立ち上がるだろう。
「マルチ測位」で継ぎ目を塞ぐ
携帯機器での盛り上がりを背景に、測位技術は今後数年間でこれまで以上に進化の歩みを速めることになる。キーワードは「マルチ」だ(図2、表1)。複数の測位技術を組み合わせることで、測位できる場所の範囲を広げたり、精度を高めたりする技術開発が大きく進展する。これまで、産業用途で使われていた精密測位技術を、携帯機器に取り込むような動きも出てきそうだ。