2009年11月7日付の日本経済新聞の朝刊に、ポーランド出身の世界的な映画監督アンジェイ・ワイダ氏へのインタビュー記事が掲載されている。

 この中でワイダ氏は、「ソ連は犯罪的な体制だった。ナチスのヒットラー以上の規模でスターリンは自国民を殺害した」と語った後で、「10数年前にいすゞ自動車のポーランド工場の開所式に招かれたことがある。20代、30代の若い人々が人生を懸けて熱心に仕事に打ち込む姿を見て本当に感動した。共産体制下のポーランドではあんな工場はなかった。全力で人々が仕事に打ち込むことが社会のエネルギーになる」と話している。

 この記事には感慨が深かった。ワイダ監督を工場の開所式に招いたのは、当時同工場のトップを務めていた筆者自身である。10余年を経て今なお、このように思い出してくれる工場を設立できたことに誇りを覚え、協力してくださったポーランドと日本の人たちに深く感謝申し上げる。実はもう1つ、心に響いた理由がある。少し気恥ずかしいが、筆者は海外の事業を担当するに当たって、「世界平和に貢献する」ことを最も基本の行動原理としていた。ワイダ監督の発言は、そのことを評価してくれているように感じたからだ。