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 日本メーカーが設置した海外製造拠点の管理者たちを今、最も悩ませているのが「思うように動かない現場」である。もちろんこれは、日本国内工場でもよく聞かれる悩み。海外においてはプラザ合意(1985年)後の海外進出ブーム以降、再三、言われ続けてきたことでもある。ではなぜ今、この「永遠の課題」を改めて持ち出すのか。それは、日本のメーカーを取り巻く環境が変わり、動かない現場を動かすことが最重要課題になりつつあるからだ。
 近年、日本のメーカーにとって新興国市場の存在が重要度を増している。新興国で造り、新興国で売る。そんな新たな構図が主流になりつつあるわけだ。
 この環境の変化に伴い、当然のことながら海外工場の位置付けも変わった(図)。従来の海外工場の役割は、部品を安く調達し、更に安い人件費の労働力を確保して、主に先進国向けの製品を安く造ることにあった。しかし、今はそれだけでは事足りない。製品の売り先が先進国だけではなく新興国の市場にも広がったからだ。これまで以上に安く部品を調達し、働き手の潜在能力を存分に引き出して生産効率を高めなければ、より競争の激しい新興国市場で闘えなくなったのである。