加藤 二子氏
加藤 二子氏
経済産業省 産業技術環境局
研究開発課
1998年に通商産業省(現・経済産業 省)に入省。2008年に産業技術環 境局 研究開発課 健康安心担当。現 在に至る。

秋山氏 デジタルヘルスの市場創出のカギ,あるいは市場の狙い目は,どこにあるとお考えでしょうか。

梅田氏 市場拡大につながる要素としては,まず時流,次に政治的背景が伴っているか,そしてトレンドがあるか,最後に学術的エビデンス(証明)があるか。少なくともこの四つの指標が満たされていない限りは,大きな市場になるのは難しいでしょう。逆に,この四つがある程度満たされていれば,たとえ小さい市場であってもやっていく価値はあると思います。

 その点でこの市場は,今は小さくても,将来は十分に大きくなる可能性があるのではないかとみています。今の若い世代の方,すなわちデジタル技術の使いこなしにたけている方や情報リテラシーにたけている方も,いずれ高齢になって健康を意識し始めます。そのときには,デジタル機器に対する違和感は全くなく,デジタルヘルスをすんなり受け入れるのではないでしょうか。現在の高齢者に「iPhone」を使ってもらうのとは大きく異なる世界になっていきます。

 ほかにも,会社というレベルで見れば,2006年に労働安全衛生法が改正され,過重労働者に対して産業医の面談が義務付けられました。ただし,今のところ現場では,面談やアンケートなどを中心とした,病態の把握のみにとどまっています。例えば,ここにデジタルのツールが導入されるようになれば,徐々に大きなビジネスになっていくかもしれません。

趙氏 日本には進んだ技術があり,それは世界的にも進んでいるものです。しかし,それを応用してサービスにつなげるところが遅れています。もっと危機意識を持ってその部分で競争していけば,市場拡大につながるビジネスモデルが生まれる可能性は十分にあると思います。