さらに,メーカーの視点から製品開発や事業化を考えたときにも,日本は世界的に見て保守的で小さなマーケットです。ですから,日本だけを視野に入れておけばよいのかといえば,決してそうではありません。製品やサービスを世界に売っていくんだ,というスタンスで取り組まないとダメではないでしょうか。

趙氏 世界のどこに行っても,病気になって早く死にたいなんて思っている人は,まずいないでしょう。健康で長く生きたいという人間の基本的な欲求を考えたとき,デジタルヘルスは必ず出てくるべき市場であると思います。

 日本と韓国は,世界的に最も少子高齢化が進んでいる国です。両国共に,国民の医療費負担や医療保険は破綻状態にあります。こうした中で,デジタルヘルスは,必ずや必要なものだと言えます。政府や国としても,それを逆手に取って(デジタルヘルスに関する)サービス面で競争していくべきだと思います。「このサービスが気に入ったから,この国に住みたい」と思う人が続出するぐらいにするべきです。

梅田氏 デジタルヘルスというのは,デジタル技術をヘルス分野に応用したものだと解釈しています。私は今,研究者の立場から,デジタル技術を活用することで,何とか早く社会に還元したり,商品につなげたりしたいという思いで研究に取り組んでいます。

 その一つとして,生体の動的な状態を常時モニタリングして解析できれば,我々が自分自身のことをもっと理解できるようになると考えています。モニタリングする対象は,脳波とか血液とかいろいろなものがありますが,できるだけ早く社会に還元させることを考えてくいと,心拍にたどり着きました。簡易な小型センサでモニタリングすることが可能で,心拍のリズムからは自律神経の動きが分かります。自律神経は我々の臓器や組織の9割をつかさどっているといわれるもので,この動きを正確に把握する意味は大きいのです。ですから,現在開発している心拍センサを,いろいろな用途で社会に実装していきたいと考えています。