COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第11回:迷宮の果て無き彷徨(上)

高野 敦=日経ものづくり
2011/11/03 00:00
出典:日経ものづくり、2005年7月号 、 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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【前回より続く】ナイトビジョン・システムは,商品には程遠い試作品ではあったが,齊藤はその機能の有用性を実感。レジェンドの安全技術の切り札として同システムの採用を即決した。商品化を目指し改良は順調に進む。ところが役員プレゼンを目前に控え,トラブルが発生する。

 それは,あまりに突然の出来事だった。それまで正常に稼働していたナイトビジョン・システムが,歩行者を一切検出しなくなったのだ。商品化の可否を決める役員へのプレゼンをたった二日後に控えて。

辻孝之
現在は,本田技術研究所栃木研究所D5開発ブロック主任研究員。写真:田中昌

 ナイトビジョン・システムの開発責任者である辻孝之はこの知らせを受け,開発拠点に駆け付ける。そこには,トラブルと必死で格闘する開発メンバーの姿があった。

「何も検出しないって,ホント?」

「はい」

「原因は?」

「それが,よく分からないんです。検出率が落ちたとか,誤認率が上がったとか,そんなレベルじゃなくて,とにかく何も引っ掛かってくれないんです」

「そんなばかな。昨日までは確かに動いていたのに。何か心当たりはない?」

「ええ,さっぱり」

 開発はある種,トラブルとの闘いだ。それは,ナイトビジョン・システムとて例外ではない。ある時には,検出精度が極端に落ちるというトラブルに見舞われた。長時間の走行で,エンジンの熱により赤外線カメラのハウジングが変形し,光軸がぶれてしまったのだ。ハウジングを設計変更する「事件」だった。しかし,今回は精度うんぬんというレベルではなく,歩行者を全く検出しないのだから,それ以上の「大事件」だ。辻は解決の糸口を求め,深い闇の中を彷徨(さまよ)っていた。

橋本英樹
現在は,本田技術研究所栃木研究所D5開発ブロック主任研究員。写真:田中昌

「辻さん」

 後から駆け付けた橋本英樹の呼び掛けに,辻が我に返る。

「あっ,橋本さん。いつ来たんですか,全然気付かなかった」

「ちょっと前だけど。で,何か思い当たる節はないの?」

「ええ,何も検出しないってことは普通に考えれば,ハードが壊れてるか,ソフトにバグがあるか,どっちかです」

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