COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第5回:「レジェンド」という名の呪縛(上)

高野 敦=日経ものづくり
2011/10/13 00:00
出典:日経ものづくり、2005年4月号 、 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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【前回より続く】「決まってるだろう,レジェンドに――。新しい4輪駆動伝達システム「SH-4WD」,通称「SH-4駆」の搭載機種がついに決まる。それは,ホンダのフラッグシップだった。並み居る競合車を相手に,操舵性と走行安定性を高いレベルで両立し異次元の価値を生み出す。開発は新たなステージに入った。

齊藤政昭
現在は本田技術研究所栃木研究所上席研究員。写真:田中昌

 真冬の日本から十数時間。まるで真夏のような日差しが燦々(さんさん)と降り注ぐ米国はカリフォルニアの地に,齊藤政昭が降り立った。彼のアタッシェケースの中には,これから始まる新型レジェンドのプレゼン用資料がぎっしり詰まっている。そのコンセプトは,カリフォルニアの日差しにだって負けないほどの輝きを放つはず。アタッシェケースを握る彼の右手に力が入る。

 タクシーに乗り込んだ齊藤が向かう先は,米国ホンダ。ここではレジェンドを「Acura RL」として販売し,日本を上回る販売実績を築いている。それだけに,レジェンドを発売するに当たっては,顧客の視点から厳しい目を向ける彼らの意見が無視できないのだ。

 そんな米国ホンダを相手に,齊藤はあの運命の邂逅(かいこう)により可能となった新型レジェンドの魅力的なコンセプトと,それをかなえるための先進的なハードを披露する。時差のせいで重くなったまぶたを閉じると,もろ手を挙げて賛同してくれる彼らの姿が浮かぶ。そうだ。プレゼンを終えたら,本場のカリフォルニアワインで新鮮な魚貝を使ったカリフォルニア料理に酔いしれよう。

 うつらうつらしているうちに齊藤を乗せたタクシーが米国ホンダに滑り込む。幹部たちが待つ会議室のピンと張り詰めた空気に,時差ボケも吹き飛ぶ。齊藤のプレゼンテーションが始った。

「えー早速ですが,次期レジェンドでは,4輪駆動を軸に,優れた安定性と優れた操舵性を高い次元で両立したいと考えております。そのために我々が用意したのが,これからご説明するSH-4WDという全く新しい4輪駆動伝達システムです。一部の方には既に,日本でご体験いただいていると思いますが,このシステムは…」

 かつて来日した米国ホンダのトップはどしゃぶりの雨の中,開発者である芝端康二と一緒にSH-4駆を載せたクルマに試乗した。その時高い評価を得たことを聞き及んでいる齊藤のプレゼンは,自信にあふれている。

「これなら,走行性能や乗り心地でライバルを圧倒し,今までにない異次元の価値を提供できると思います」

「なるほど,コンセプトはよく分かったよ。SH-4WDも素晴らしい。だけど齊藤君,ここがどこかを知ってるかい」

「アメリカのカリフォルニアですけど」

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