ゲーム・ソフト開発者側がスマートフォンに興味を示すのは、従来のゲーム開発の課題を解決できる可能性を秘めているからだ(表1)。これまでは新型のゲーム専用機が登場するたびに、ゲーム・ソフト開発費が上昇するというサイクルを繰り返してきた。しかも、巨額の費用を投じて開発したゲーム・ソフトが全く売れずに終わることもある。ゲーム・ソフト会社は、ハイリスクな事業を強いられてきた。
一方、スマートフォン向けゲームは、開発コストはおおむね安価であり、その期間は短く、人数も少なくて済む。その結果、ローリスクな事業を進められる。
スマートフォン向けゲームでは、対応ゲームの単価は無料から数百円と安いが、アイテム課金や広告収入など、多様な収入源がある。例えばディー・エヌ・エー(DeNA)やグリー、米Zynga社などは、無料のソーシャル・ゲームを配信しながら、アイテム課金によって大きな収益を上げている。もちろん有料ゲーム・ソフトがヒットすれば、ゲームの販売だけで大きな収入になる注2)。
注2) 代表例がAngry Birdsである。同ゲームは、iPhone向けとして販売されて以来、ダウンロード数は数億以上という驚異的な大ヒットを飛ばした。Interpret社でゲーム業界の アナリストを務めるMichael Cai氏によれば、「Angry Birdsの開発には約40万米ドルを費やしたが、発売後1年間で1億米ドルを売り上げた」という。
スマートフォン向けゲームには、開発者だけでなく、多くのゲーム・ユーザーも引き付けている。ゲーム事業をグループ事業の柱として位置付けるソニーとしても、この状況を看過できなくなっている。
米Flurry社の調べによれば、米国市場における携帯機器向けゲーム・ソフト市場で、iOSやAndroidを搭載した端末向けのゲーム・ソフトの売り上げは34%を超えた(図5)。実に、PSP向けゲーム・ソフトの売り上げの3倍以上である。