DC-DCコンの小型化競争

 携帯機器などで出力電圧を調整する役割を担うDC-DCコンバータに関しては,各社がCEATECで小型化を競っていた(図18)。背景には,「携帯電話機に向けた小型DC-DCコンバータの需要が高まっている」(村田製作所)ことがあるようだ。

図18 DC-DCコンバータの小型化に挑む
部品を基板に内蔵するなどして小型化したDC-DCコンバータを各社が展示した。ロームはスイッチング周波数を20MHzまで高めた(a)。村田製作所は基板にインダクタを,TDKは制御ICを内蔵して小型化している(b,c)。
[画像のクリックで拡大表示]

 これまでは,携帯電話機に搭載する各機能に電源電圧を供給する電源回路は,パワー・マネジメントIC(システム電源IC)が担当していた。このICには複数の電源回路が集積されており,1チップで複数の機能に電力を供給できる。

 しかし最近では,無線LANやワンセグなどの新機能が相次いで搭載され始めた。このため,携帯電話機の基本的な機能への電源供給はパワー・マネジメントICで対応し,機種によって異なる機能については個別のDC-DCコンバータで対応するように変わっているという。

 ただし携帯電話機には,一般的なDC-DCコンバータを実装する面積も高さもない。そこで,小型DC-DCコンバータの需要が高まっているわけだ。

 DC-DCコンバータを小型化するには,いくつかの手法がある。このうち,「業界最高のスイッチング周波数」(説明員)を実現して小型化したのはロームである。同社は,スイッチング周波数が20MHzと極めて高い降圧型DC-DCコンバータICを開発し,動作の様子を披露した。製品化の予定はないものの,需要があれば検討するとした。

 スイッチング周波数を高めたことで,DC-DCコンバータ回路の外付け部品の中で最も外形寸法が大きいインダクタを小型化することができた。20MHzに設定すると,プリント基板上に作り込んだスパイラル・インダクタが使えるようになるという。出力電流は最大で400mA。変換効率は,入力電圧が+3.6Vで出力電圧が+1.8V,出力電流が400mAのときに75%を得られるとする。

基板に部品を内蔵して小型化

 村田製作所とTDKはそれぞれ,プリント基板に一部の部品を内蔵してDC-DCコンバータ・モジュールを小型化した。村田製作所はインダクタ(電源用コイル)を,TDKは制御用ICを内蔵した。

 村田製作所が展示したDC-DCコンバータ・モジュール「LXDC2HLシリーズ」は,既に携帯電話機などに向けて量産を始めており,数社の供給先を確保しているという。外形寸法は2.5mm×2.0mm×1.0mmと小さい。インダクタを内蔵した基板の厚さは0.6mmである。

 基板上に,EMI低減用のコンデンサとDC-DCコンバータICを実装してある。このモジュールに入力コンデンサと出力コンデンサを外付けするだけで,DC-DCコンバータ回路を構成できる。入出力コンデンサを含めた回路全体の面積は約10mm2。ディスクリート部品を使って構成した場合は30mm2だったという。

 入力電圧は+2.3~5.5V。出力電圧は固定で,工場出荷時に+0.8~4.0Vの範囲で設定する。出力電流は最大600mA,スイッチング周波数は3MHz。変換効率は80~90%に達するという。

 TDKは,制御ICを内蔵したDC-DCコンバータを展示した。ICを基板に内蔵しない場合に4mm×4mmだった実装面積を今回,2.95mm×2.35mmに小型化した。4層基板の2層と3層の間に,制御ICを内蔵している。同社のIC内蔵基板技術「SESUB(semiconductor embedded in substrate)」を用いた。ICを基板内に内蔵しているため,EMIの低減効果も期待できる。

 スイッチング周波数は6MHzで,出力電圧は+1.8~3.3Vである。現在,国内の機器メーカーに向けてサンプル出荷中とする。