パイオニアはEV向け

 ワイヤレス給電は携帯機器にとどまることなく,自動車分野にも応用範囲を広げる。パイオニアは,電気自動車(EV)向けの非接触充電器を参考出展した。電磁誘導方式を採用し,送受電コイル間の伝送効率は90%以上を達成したという。

 特徴は,銅線を巻いたコイルを利用するのではなく,プリント基板に配線したコイルを用いたこと。詳細は明かさなかったが,パターンの異なる配線を設けた基板を複数積層した。アンテナ部分を薄型化でき,材料コストを低減できるとしている。

 EVと充電器との制御信号などの通信には,IEEE802.11nを用いた。パイオニアが非接触充電器に取り組むのは,充電器を介して自動車と家庭内の機器をつなげることで,コンテンツの共有といった連携ができるようになるとの思いからだ。そのため,ETCなどの車載機器で利用している5.8GHz帯は家庭で使いにくいことから用いず,家庭で広く普及している無線LAN規格を採用した。

ソニーの「エネルギーサーバー」

 EVや住宅に向けて開発が加速している蓄エネ関連では,ソニーや村田製作所という新たなプレーヤーが試作品を展示した(図16)。

図16 2次電池で新たな動き
ソニーはLiイオン2次電池で直流対応の液晶テレビを動かした(a)。村田製作所はラミネート型Liイオン2 次電池の量産体制を整えたことを公表(b)。
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 このうちソニーは,2次電池に充電した電力を直流で取り出し,直流対応に改造した52型液晶テレビを動作させた。2次電池は,リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を正極材料に利用したタイプである。この2次電池1.2kWhのモジュールに,直流の出力,交流の出力,各種出力制御用の回路などを実装して,家庭向けの「エネルギーサーバー」とした。

 一方,村田製作所は,ラミネート型Liイオン2次電池を展示し,電流容量2Ahのセルについて量産体制を整えたことを公表した。無停電電源や電動アシスト付き自転車向けでの採用を狙う。

 会場では,2014年ごろに製品化を計画する10Ahの試作セルのほか,鉛蓄電池の代わりに2Ahのセルを適用したエンジン始動用電源の試作品などを展示した。エンジン始動用電源は,鉛蓄電池では8kgの重さだが,Liイオン2次電池にすることで6kg程度に軽量化できるという。