サイゼリヤのエンジニアリング部が目を付けたのは,最も時間を費やしていた掃除機がけの作業だ。まず,掃除機というハードがどんな機能を担っているかを分析した。その結果,「フロアの上にあるごみを吸引という手段を使って掃除機の中に移動させている」という結論が導き出された。

 次に,具体的なごみの中身を調べた。使用後の掃除機からごみパックを取り出して検証したところ,ごみの6割が砂,2割がほこり,残りの2割が細かな食べかすであることが分かった。では,砂やほこりを移動する手段として「吸引」は果たして適当なのか。砂やほこりの移動なら,ほうきやモップでも十分できるのではないか…。

 結局,朝の準備作業は,まずモップがけをしてから,必要な部分のみを掃除機がけする手順に変えた。モップで集めたごみは数カ所にためておき,後で掃除機で吸い取ればいい。目的に応じて,使用するモップも変えた。

 加えて,駐車場のごみ拾いや入り口の窓ふきなどは,ランチ後や開店中の空き時間などに実施することにした。「当初はスタッフから『本当に朝にやらなくていいのか』と疑問の声も上がった。でも,今では常に気を配ることに慣れてくれ,前よりも清潔に保たれているように感じる」(龍氏)。前橋インター店では現在,1時間かかっていた開店前作業を30分でこなせるようになった。その分,キッチンの準備作業に回し,要員を1人,削減している。(池松由香)