COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第7回:頑固で無謀な技術者たちが半導体の歴史を変えた(上)

木村 雅秀=日経エレクトロニクス
2011/09/22 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2007年9月10日号 、pp.131~133 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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【前回より続く】
1米ドル180円を突破した1978年
1973年に変動相場制へ移行した円相場は,1977年ごろから高騰を続け,ピークを迎えた1978年には1米ドル180円を突破した (左)。この年,テーブル型のインベーダー・ゲームが大ヒットした(右)。写真は共同通信社の提供。

 1975年秋。CMOSの高速化技術の開発に着手した日立製作所中央研究所の増原利明と酒井芳男は,思いつく限りのアイデアを出し合った。その数は最終的に数十件にも上った。一つ一つに対し,実現の可能性や課題などを検討する。彼らが選び取った宝石の原石は,1976年初旬に酒井が提案した「2重ウエルCMOS」と呼ぶ技術だった。さまざまな角度から見て最も優れている。Si基板上にp型不純物を導入した「pウエル」とn型不純物を入れた「nウエル」を作り,それぞれのウエル内にトランジスタを作り込む技術である。

 そもそもCMOS回路が遅いのは,nMOSとpMOSという2種類のトランジスタを同一基板上に作らなければならないことに起因する。従来はn型Si基板上にpMOSトランジスタ,基板上のpウエルにnMOSトランジスタを形成していた。この方法では,nMOSの性能を高めようとするとpMOSが遅くなるといった具合に,両者を同時に最適化できない。n型Si基板とpウエルの不純物濃度をそれぞれ独立に調整できないためである。これに対し,2重ウエルCMOSは不純物濃度の低いSi基板に,最適な濃度でpウエルとnウエルを作れる。nMOSとpMOSの性能を最大限に引き出せる。

 酒井はこの技術を1976年8月に増原と共同で特許出願した。当時はほとんど注目されなかった。日立の特許部門には評価の高い特許を1年以内に海外出願する慣習があったが,この発明は国内出願のみで海外出願を見送っている。現在では特許が認められたのが不思議なほど,CMOSに欠かせない標準技術となっている。

高速化に向く2重ウエルCMOS技術を考案
Si基板上にpウエルとnウエルを作り込む2重ウエルCMOSは,ウエルの不純物濃度をnMOSとpMOSでそれぞ れ最適化することで高速動作を可能にする。従来のCMOSはpウエルしかなく,nMOSとpMOSで不純物濃度を 同時に最適化できなかった。
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