NFCをきっかけにリアル店舗とECサイトが融合へ

 スマートフォンがクレジットカードになり、かつ決済端末になれば、その消費スタイルは大きく変わりそうだ。まず、店舗側にとっては、リアル店舗であっても、ECサイトやECサイトに近い仕組みを用意しなければならなくなる。Google WalletでGoogleが描く消費スタイルに従えば、クーポンをGoogle Wallet内に格納しておき、支払いの時にこれを使う。この支払いには、NFC搭載のスマートフォンを使ったクレジットカードまたはデビットカード決済が自然だ。この決済はGoogle Wallet経由なのでインターネットで行われる。つまり、楽天やamazon.comでクレジットカード決済するのと変わらない。違いがあるとすれば、決済する場所がリアル店舗内であるか、店舗外かだけである。

 また、NFCを使うことで商品選びの新しい形も出てくるだろう。NFCではコスト高になる暗号処理回路などを持たないタグ(NFCタグ)が、定義されている。これに商品情報(または商品情報とヒモ付いたID)を入れておき、商品に貼っておく。利用者は、NFCタグにスマートフォンをかざし、在庫情報や商品情報を調べたり、あるいはショッピング・サイトの買い物カゴに入れたりすることが可能になる。

 このようにして、リアル店舗の決済がインターネット上に構築されることで、在庫管理などもインターネットから行われるようになるだろう。Google社は検索の究極の姿の一例として「今購入したい商品がどこに行けば、在庫があるか分かるようになること」を挙げていたが、これに一歩、近づくことになる。この際、在庫管理などのシステムもGoogle社が無償で提供することも十分に考えられる。Google社としては、まずはCitibankが持つ世界規模の加盟店網を最大限利用して、こうしたシステムの構築に乗り出すと考えるのが自然なシナリオだろう。

 ここまでGoogle社の動向について述べたが、Apple社については、まだ、サービスを公表していないことから、見えない部分が多い。しかしiTunesやApp Storeなどで使われるApple社の決済システムをうまく使って、リアル店舗での決済に進出してくることになると思われる。

Amazon.com社も参戦の予感

 ここで気になるのがEC最大手の米Amazon.com社の動向である。Amazonが現状モバイル・ペイメントを活用した新たな展開を始めるというニュースは聞かないが、ECサイトとリアル店舗が融合した商取引はamazon.comでも実際に行われている。

 例えば個人がamazon.comのマーケット・プレイスに商品を出品し、その商品を顧客に対面販売(商品は配送)するようなことは既に可能である。顧客の目前でamazon.comにアクセスし、出品した商品の画像を見せながらそこで顧客に購入してもらえばよい。そのような利用シーンでは、現状タブレットやノートパソコンでネット決済すればよいのだろうが、先にも述べたスマートフォンによる簡易POS機能があれば便利だ。このような利用シーンにamazon.comが目を付け、amazon.comの決済機能を拡張してスマートフォンやNFCに対応するような計画を、用意周到なAmazon.com社のこと、当然考えていてもおかしくはない。