NTTドコモもNFC対応へ

 モバイル決済推進協議会などの場で日本におけるNFC化、Type A/B方式の導入検討が進む中、しばらくの間静観のスタンスを崩さなかったのがNTTドコモである。「おサイフケータイ」の生みの親でもあり、携帯電話機を使ったクレジットカード・サービス「iD」を推進し、FeliCaビジネスの実質元締めであるフェリカネットワークス社の大株主でもあるNTTドコモは、FeliCaビジネスを拡大する立場にある。非接触ICカードのNFC化は日本にType A/Bの導入を推進することにもなり、ともすればFeliCaを否定しかねない。こうした事情からNFCの推進には慎重な姿勢を見せてきたわけだ。日本国内におけるNFC化の議論は、最大の携帯電話事業者であるNTTドコモ不在のまま続けられてきた。これが結果的には国内のNFC導入へ向けた動きを停滞させていたのも事実である。

 ところが2011年になり、そのNTTドコモも重い腰をついに上げた。同年2月、2012年末からNFCを搭載したAndroid端末を使ったサービスを韓国の通信事業者であるKTと共同で提供していくと発表したのだ。

日本におけるNFCとモバイルペイメントのこれから

 これまで述べた通り、日本の携帯電話事業者は、KDDI、NTTドコモが正式に商用サービスでのNFC利用を表明済みで、正式発表のないソフトバンクモバイルについても実証実験を完了済みである。このような状況から2012年以降、日本国内の携帯電話機とスマートフォンのラインアップにNFCに対応するものが加わると予測される。現在、携帯電話事業者の関係者の間で、NFCに対応する携帯電話機の名称をどうするか、意見が交わされているようだ。具体的には、「おサイフケータイ」を継承するか、違うブランド名を考えるのかという議論である。

 NFC搭載携帯電話機に当初、搭載されるアプリケーションは現段階では不明だが、少なくとも日本国内においてNFCに積極的なMasterCardによるPayPassが搭載されることは間違いないだろう。

 とはいえ、PayPassなどによるペイメント・サービスが今後、日本国内で普及するには、店舗のPOSや従来のクレジットカード決済端末に新たにType A/B(NFC)対応のリーダー/ライターを設置しなければならない。先にも述べた通り、非接触クレジットカード・サービスにおいてクレジットカード会社の明確なコンセンサスが得られないままの状況で、PayPassやpayWaveが普及するというシナリオは描きにくい。

 このように混とんとした日本の状況を尻目に、対岸のアメリカではGoogle社が2011年5月にNFCを利用した決済サービス「Google Wallet」を発表して話題となった。Google社 はさらに2011年8月に米Motorola Mobility社を 買収すると発表し、世間を騒がせた。Googleによるこれら一連のニュースは、今後のNFCの方向性を探る上で極めて示唆に富んでいる。

 次回は、現在、NFCペイメントの決定権を握る携帯電話事業者とGoogle社の対決を中心に、今後のNFC搭載携帯電話機を使ったサービスを展望する。