国際決済ブランドはNFC化に総論賛成・各論で賛否分かれるカード会社

 携帯電話機でNFCペイメントを実現する――。実証実験では試みられたものの、日本国内で本格的に展開するにはクレジットカード業界の協力が必要だ。しかし、2007年ごろはここに関しては総論賛成・各論反対というのが現状だった。

 おサイフケータイが日本で登場した2004年頃、世界では非接触ICを使った決済システムが普及していないことから、JCBが「QuichPay」、米Visa World Wide社が「Visa Touch」という名称で国内においてFeliCaを使ったサービスを展開していた。NFCベースの非接触ICカードのサービスについて両社とも総論としては、海外との相互運用性が維持され、決済端末やカードの製造コストがFeliCaに比べて安いため、Type A/B方式の導入には賛成だった。Visaは日本以外でpayWaveを推進しており、JCBも台湾など一部の地域でType A/B方式のJ/Speedyを展開していたからである。

 しかし、日本国内でType A/B方式を用いたpayWaveやJ/Speedyを導入するとなると、それまでに展開済みのFeliCa決済端末や、すでに大量に発行していたFeliCaカードをどうやってTypeB方式に切り替えて行くのかという問題を解決しなければならない。JCBやVisaがいくら導入したいと考えても、現実に設備投資や置き換え作業を行うのは、クレジットカード発行会社であり、こうした企業がこの方針に従うのは難しい。

 クレジットカード発行会社にはQuicpayやVisa Touchの導入に積極的だったトヨタファイナンスや三菱UFJニコスのようにFeliCaに大きな投資を行った会社もあれば、オリエントコーポレーションのようにType Aのカードを利用してPayPassの導入を小規模ながらも推進したところや、クレディセゾンのようにそれらに対し積極的な投資を行わなかった会社もある。

 NFC搭載携帯電話機の導入に伴い、新たにType A/B方式に対応する決済端末を設置していくことについては、FeliCaに対する累積投資額の大きい会社が「反対」の立場をとり、それ以外の会社が賛成の立場を取った。賛成派の中には携帯電話事業者(KDDI、ソフトバンクモバイル)との関係を強化したいとの意図もあっただろう。

NFCに対応するか、混迷極めるカード業界

 中でも微妙な立場となったのはJCBである。JCBは当初国際決済ブランドの1社としてVisaや米MasterCard World Wide社と同様にType A/B方式の導入に前向きだったのだが、傘下でQuicpayを積極的に推進したトヨタファイナンスの存在と、JCB自らも積極的にQuicpay導入を推進してきた経緯などから社内に反対意見が強く、最終的には反対派の立場を表明することとなった。JCBの国際決済ブランドとしての顔よりも、国内クレジットカード会社としての顔が前面に出た形だ。しかし、最終的にはKDDI、ソフトバンクモバイルに強く押し切られる形で、NFC化に協力する方向になりそうだ。

 結局のところ、現段階においても日本のクレジットカード会社の間で、NFC化について明確な合意が得られない状況にある。前回、海外では国際決済ブランドの対応の遅さに携帯電話事業者が業を煮やし、自らNFCを用いたモバイルペイメントの仕様を作り上げたことを述べたが、日本でもNFC推進派のKDDI、ソフトバンクモバイルなどがそれに近い状態になりつつある。