大手の後工程受託メーカーは,Cuワイヤ対応による既存事業のシェア拡大とともに,事業領域の拡大も狙っている。その一つが, TSV(throughsilicon via)を使った3次元実装技術や,部品内蔵技術,そして受動部品をSi基板上に作り込むIPD(integrated passive device)技術などを駆使した,モジュール事業である。チップの微細化に伴う技術障壁が高まっていることから,「今後はパッケージ技術の重要性がさらに高まるだろう。機器メーカーが我々と協業する利点は多い」(Amkor社のPopovich氏)と自信を見せる。

 こうした将来技術の確保に向けて,大手の後工程受託メーカーは,リーマン・ショックの渦中にあっても研究開発投資の手を緩めなかった。例えばASE社は,研究開発費の売上高比率を,2007年の約3.2%から2008年は約4.1%,2009年は約4.2%に高めた(図6)。研究開発費として,2007年に約1億米ドル,2008年に約1.2億米ドル,2009年に約1.1億米ドルと継続的に投資している。さらに2009年には,EMS企業である台湾Universal Scientific Industrial Co.,Ltd.(USI)を子会社化して,エレクトロニクス機器の技術動向を見極める体制を整えている。

図6 好不況によらず研究開発に安定投資
ASE社は,売上高に占める研究開発投資額の比率を高めてきた。今後も,売上高の一定比率を 研究開発に投資する方針である。
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 ASE社はTSV技術について,まずはSiインターポーザ向けに2012年までに実用化するとしており,既に試作品を開発済みである(図7)。その次の段階として,Siチップ向けTSV技術を開発中だ。Siチップ向けTSV技術は,ネットワーク機器向けLSIメーカーや携帯電話機向けベースバンドLSIメーカーとそれぞれ,2年以上にわたる共同開発に取り組んでいる。

図7 次世代技術の開発も着々
ASE社は,次世代技術であるTSV技術や部品内蔵技術,IPD技術の開発を積極的に進めている。2010年から徐々に量産適用が始まりそうだ。無線や 光によるチップ間接続技術の開発も進めている。
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 部品内蔵技術については,パッケージのインターポーザに受動部品または能動部品(Siチップ)を内蔵する技術がある。このうち,受動部品をインターポーザに内蔵する技術を先に実用化する。インターポーザにSiチップを内蔵する技術は,子会社のEMS企業であるUSI社と共同で,電源制御用途に向けて試作を進めている。2010年第4四半期に,複数の試作品が完成する見込みだ。

 ASE社のIPD技術を使った半導体製品の開発も順調に進んでいる。携帯機器向け2製品が2010年第3四半期と同年第4四半期にそれぞれ発売されるという。いずれもRF関連製品であり,最大で20個ほどの受動部品を作り込んでいる。