快進撃を続けるファウンドリー企業とともに,半導体の後工程受託メーカーも勢いを増している。 規模拡大だけでなく,技術開発にも積極的である。 従来のパッケージ組み立て技術に加えて,モジュール技術も手中に収めつつある。
規模を生かした材料や装置の調達力を強みに,パッケージの組み立てやテストなどのサービスを安価に提供してきた後工程受託メーカー。それが今,技術開発の重要性を口々に語りだした。「これからは技術がカギを握る」(台湾ASE Group, Central Engineering, VPのMike Hung氏),「新しい技術を自ら生み出していく」(米Amkor Technology Inc., Asia Pacific, General Manager, Senior Vice PresidentのMark Popovich氏)という。
後工程受託メーカーが技術開発を重視し始めたのは,多様化する顧客の要望に応えるためである(図1)。これまではファブレス半導体メーカーからの受注が中心だったが,ここにきて垂直統合型半導体メーカー(IDM)からの依頼が増えている。規模拡大により多様な顧客を抱えると,さまざまな要求に対応しなくてはならなくなる。そのために,低コスト技術や高密度実装技術,システム・インテグレーション技術といった,方向性の異なる技術をすべてそろえる必要が生じている。「以前は日本のIDMが技術の百貨店だったが,今や後工程受託メーカー大手が取って代わりつつある」(日本のIDM技術者)状況だ。
技術開発に力を入れるもう一つの理由は,台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC)などのファウンドリー企業の存在にある。後工程受託メーカーは,ファウンドリー企業と一体となってLSI製造全体を受託している場合が多いからだ。ファウンドリー企業が微細化で先頭集団を走り始めており,それに追随する必要がある。「TSMCが先端プロセス技術の量産体制を整えた段階で,対応する後工程の準備が終わっていなければならない」(ASE社のHung氏)という。後工程受託で最大手のASE社は,TSMC内に後工程の製造装置を設置するとともに,40人ほどの技術者を派遣している。
後工程受託メーカーが,規模だけでなく多様な技術を手中に収めるようになれば,受託企業の枠を超え,顧客の課題を解決する,より付加価値の高いサービスを提供できるようになる。そのために後工程受託メーカーは,モジュール技術などの新たな領域の技術を駆使し始めている。機器メーカーや半導体メーカーにとって,後工程受託メーカーの有効活用が他社との差異化につながりそうだ。
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後工程受託市場では大手メーカーによる寡占化が進んでおり,大手4社で市場全体の約半分を占めている(図2)。ASE社を筆頭に,Amkor社,台湾Siliconware Precision Industries Co., Ltd.(SPIL),シンガポールSTATS ChipPAC Ltd.が続く注1)。4社合計の売上高は,1999年からの10年間で2倍以上に伸びた(図3)注2)。ASE社の2009年の売上高は約25.5億米ドルと,ファウンドリー企業のGLOBALFOUNDRIES社と同程度である。
注1) 現在,ASE社とAmkor社が日本に製造 拠点を持っている。ASE社は2004年にNEC エレクトロニクス(当時)の高畠工場を,Amkor 社は2001年に東芝の岩手県の拠点を買収し た。この2社に加え,STATS ChipPAC社が 日本市場のさらなる開拓に意欲を示している。
注2) SPI Lは,この10年間で売上高を約5倍 に増やした。「2001年のITバブル崩壊後も継 続的に投資を続けたことが利いた」(同社 Investor Relations Div., DirectorのJanet Chen氏)。