スマートフォンやタブレット端末など,機器の進化は今後も半導体技術の微細化を前提にする。 心臓部を担う論理LSIの受託生産を巡り,ファウンドリー企業による競争が激化し始めた。 どのファウンドリー企業を選ぶか,五つの指標で比較した。

 「この先も微細化を追求する」(米Xilinx, Inc.)。「顧客は予想以上に微細化に積極的」(台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC))。スマートフォンやタブレット端末,家庭用ゲーム機などのデジタル民生機器では,今後も半導体製造技術の微細化を求める声は消えそうにない。LSIの低消費電力化や低コスト化といった恩恵を,引き続き得られる見通しだからである。

 今後は,先端論理LSIの製造技術開発と生産を外部委託する半導体メーカーや機器メーカーが増える。そこで存在感を増すのが,ファウンドリー企業だ。ここといかに付き合い,うまく使いこなすかが,機器メーカーや半導体メーカーの競争力を決める。

本気になるSamsung社

図1 3社がファウンドリー市場の覇権を競う
今後,先端世代の論理LSIの受託生産を主に担うことが予測される3社について,ファウンドリ ー事業における現時点での競争力を本誌が評価した。平均点を2点とし,他社に比べて優れて いると評価した項目を3点,他社に比べて劣っていると評価した項目を1点とした。
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 ファウンドリー企業の選択肢は,今後の技術開発と設備投資に求められる体力を考えると,3社に絞られそうだ。まずはTSMC。ほぼすべての競争軸で圧倒的な存在である(図1,表1)。同社に挑むのが,米GLOBALFOUNDRIES Inc.と韓国Samsung Electronics Co., Ltd.だ。

表1 特徴の異なる3社が激突
3社のファウンドリー事業の概要をまとめた。
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 GLOBALFOUNDRIES社は2009年春に設立された。マイクロプロセサで米Intel Corp.としのぎを削ってきた米Advanced Micro Devices, Inc.(AMD社)の製造技術と,アブダビの投資会社Advanced Technology Investment Co.(ATIC)の資金力が強みである。

 Samsung社は,2005年ごろにファウンドリー事業に参入した。「この5年間は技術を育ててきた。この先,顧客の獲得と設備投資を加速する」(同社)という。ファウンドリー市場でのシェアは2009年時点で2%弱だが,潜在能力は高い。