2011年後半から本格化するスマートフォンへのNFC標準搭載を契機に、米Google社や米Apple社、欧米の携帯電話事業者、銀行、クレジットカード業者などが、NFC(near field communication)を使ったモバイル・ペイメント(携帯電話機による決済サービス)に本格的に乗り出す(NFCの詳細についてはこちらを参照)。Google社がクーポンとNFCによる決済を融合させたスマートフォン向けサービス「Google Wallet」を2011年夏から開始するほか、米国、英国、ドイツ、フランスなどの携帯電話事業者や銀行、交通機関がこぞって、2012年頃に向けてNFCとスマートフォンを組み合わせた決済サービス開始を計画している。狙いは現実世界での購買活動をネットワーク上に取り込み、これを解析することで、新しいモバイル・サービスを生み出すことだ。

 本連載では、欧米と日本のモバイル・ペイメントの歴史を振り返ったうえで、今後登場するサービスや、Google社やApple社の参入によるモバイル・ペイメントの新しい業界地図を展望する。

 第1回目の今回は、世界に先駆けて携帯電話機の非接触通信を使ったモバイル・ペイメントを実現した、おサイフケータイが生まれるまでを中心に解説する。

情報サービスのキャリア課金が源流

 最初に今回のテーマである「モバイル・ペイメント」の定義をしておきたい。モバイル・ペイメントはコンビニエンス・ストアや駅の改札などの現実社会だけでなく、電子商取引(EC)を含んだモノを売る場(マーケット・プレイス)で、携帯電話機やスマートフォンを使って決済することを指す(図1)。この定義に従えば、モバイル・ペイメントの歴史は、ゲームや情報サービスなどのいわゆる「モバイル・コンテンツ」の支払い手段として使われ始めたところから始まる。

モバイル・ペイメントの定義
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モバイル・コンテンツの支払いは基本的にはネット決済のモバイル版だが、携帯電話事業者による収納代行(キャリア課金)が基本となっている点が従来のネット決済と大きく異なる。モバイル・ゲームの発展に伴い、モバイル・ペイメントにはプリペイド方式の電子マネーという決済手段も取り込まれていった。

iモードでモバイル・ペイメントが活性化