(写真:栗原 克己)

 昨年春,名野隆夫は三洋半導体を定年退職した。名野はさまざまな顔を持っていた。社内ではちょっとした有名人だった。「アナログ大学院」と呼ばれる研修制度を主催し,100人を超えるアナログ技術者を育成した。売却交渉中の同社に投資ファンドが食指を動かすのは,電源ICやオーディオICなどアナログ系半導体の設計力に定評があるからだ。その実力を陰で支えてきた一人が名野である。