ある特性を高めれば実用化に大きく近づく合金があったとしよう。研究開発の結果、その実現方法が発見されれば、一気に実用化が進むかもしれない。ただし、もしその方法にレアメタルの使用が不可欠だったならば、レアメタルを使わない別の方法の研究にもチャレンジする─。レアメタル依存症からの脱却には、そんな取り組みが必要になる。

Mgの密度はFeの1/4

 その好例が、マグネシウム(Mg)合金の高強度化だ。Mg合金の密度は鉄(Fe)の約1/4とアルミニウム(Al)よりも小さく、地球上での存在量も多い。コスト面での課題は残るものの、次世代の軽量化材料として注目を集めている材料だ。

 特に、軽量化が燃費改善と二酸化炭素(CO2)の排出低減に直結する自動車では、Mg合金への期待が高い。実際、ある欧州の自動車メーカーがMg合金を構造材料として使った自動車を試作。その総質量は260kgで、燃費は100km/Lにもなったという。

 ただし、自動車用の構造材料としてMg合金の適用を考えた場合、「比強度や破壊靭性値がAl合金と比較して低い」(物質・材料研究機構新構造材料センター軽量材料グループグループリーダーの向井敏司氏)ことが課題だ。現状で一般的なMg合金(AZ31)の鋳造材料では、降伏応力と比重の比である比強度は約120MPa、破壊靭性は20MPa・m1/2。展伸材ではいずれも高くなるが、それでもAl合金には届かない。2000系や7000系のAl合金では比強度が150MPaを超えるし、破壊靱性も30MPa・m1/2を超えるものが多い。

準結晶を分散化