日本の製造業が得意とする先進的な製品の多くに、レアメタル(レアアースを含む)が使われている。レアメタルだからこそ高い性能を実現できているとの認識は、いつの間にか、レアメタルへの過度な依存状況を作り出した。しかしこの認識は、果たして本当なのだろうか。近年明確になったレアメタル調達リスクの大きさは、「レアメタル依存症」からの脱却を日本の製造業に強く求めている。
脱・レアメタル依存症
目次
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第7回:さらば使い捨て
後回しだったリサイクル国内資源活用に本腰
レアメタルを自給できないなら、とことん再利用すればよい。既にレアメタルを使ったハイテク製品が日本国内にあふれ、都市鉱山と呼ばれている。寿命が尽きた製品から大量のレアメタルが取り出せるはずだ─。ところがそれが、一筋縄ではいかないのである。
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第6回:さらば安直使用-超硬工具 W編
追究し切れていない 2番手の潜在力引き出す
超硬合金は一般的に、タングステン(W)の炭化物である炭化タングステン(WC)と、コバルト(Co)などの粉末を混合して焼き固めた材料だ。この種の超硬合金を使った工具(超硬工具)にはWCが80質量%以上含まれることも多く、Wの主要な用途の1つとなっている。
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第5回:さらば安直使用-排ガス触媒 Pt/Pd編
浄化システムとして捉え 全体最適を目指す
自動車排ガス触媒に使う元素は、白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの白金族である。価格が高いので、使用量を削減するための技術開発がもともと盛んな分野だ。ところが、大きなエアポケットがある。トラックなどの大型ディーゼル車向けの排ガス触媒である。
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第4回:さらば安直使用-Mg合金 Y/Gd編
添加剤に頼らずに 熱処理で対応
ある特性を高めれば実用化に大きく近づく合金があったとしよう。研究開発の結果、その実現方法が発見されれば、一気に実用化が進むかもしれない。ただし、もしその方法にレアメタルの使用が不可欠だったならば、レアメタルを使わない別の方法の研究にもチャレンジする─。レアメタル依存症からの脱却には、そんな取り組みが…
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第3回:さらば安直使用-モータ用磁石 Dy編
メカニズムを解明し 必要な所に必要なだけ
小型で軽量な高性能モータとして幅広い用途で使われているのが、永久磁石型の同期モータ(PMモータ)である。ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)の走行モータをはじめ、電動パワーステアリングの駆動モータ、省エネルギ型のエアコン用圧縮機のモータ、ドラムを斜めに配置した洗濯機のドラム駆動用モータ、工作…
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第2回:さらば安直使用-研磨剤Ce編
視点を変えて 装置側からアプローチ
酸化セリウム(CeO2)が主成分の研磨剤は、レアメタル依存症の典型だ。それ故、「削減」「代替」の可能性を示す格好のケースにもなっている。
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第1回:依存の実態
いつの間にか不可欠に利用の根拠に立ち返れ
「ガラスの研磨剤として使われているセリウム(Ce)は、資源量が豊富で安価だから使っていただけという側面がある」。こう指摘するのは、東北大学未来科学技術共同研究センター(NICHe)副センター長の小澤純夫氏だ。ところが、5年間で2倍にも上昇していなかったCeの価格が2010年の夏、約1カ月で4倍に高…