「どれだけのユーザーに受け入れられるんだろうか」

 これまでとは全くコンセプトが異なる製品だけに,西沢学(現・ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE) Worldwide Studios JAPANスタジオ 制作部 シニアゲームデザイナー)は,一抹の不安を覚えていた。

torneの開発陣。左から,SCE 商品企画部 3課 課長の渋谷清人氏,同社 ソフトウェアプラットフォーム 開発部 2課 1グループの石塚健作氏,同社 Worldwide Studios JAPANスタジオ 制作部 シニアゲーム デザイナーの西沢学氏。

 「テレビを楽しむゲーム」。これが,西沢が目指したプレイステーション 3(PS3)向け周辺機器「torne(トルネ)」だった。これまで多くのゲーム・デザインを手掛けてきたとはいえ,こんな製品に携わったのは初めてだった。

 ふたを開けてみれば,それは杞憂にすぎなかった。2010年1月の発表から注目を集め,発売前の事前予約分だけで発売日入荷分が売り切れる店舗も現れ始めた。発売日である同年3月18日には,当日販売分を求め,開店前の家電量販店にユーザーが列を成した。

 ゲーム市場の調査などを手掛けるメディアクリエイトによれば,torneは最初の1週間だけで6万台以上が販売された。2010年3月には10万台以上,同年4月には14万台以上が販売されたという。その後も人気は衰えず,2010年3~7月の販売台数は,累計45万台近くに上る。PS3向け周辺機器としては,異例のヒットである。

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快適さと楽しさを実現

 torneは主に,USB接続の小型地デジ・チューナーと,PS3で動作する視聴・録画ソフトウエアから成る。こうした構成だけを見れば,パソコンに外付けする地デジ・チューナーと何ら違いはない。ヒットにつながったのは,安価な上,従来のHDDレコーダーと一線を画す「快適」で「楽しい」操作を実現したからである。