「3年後、5年後のユーザー・ニーズに、継続的に対応できる技術は何か。この答えが、LSIインタフェースの光化である」(日本アルテラ マーケティング部 ディレクタの堀内伸郎氏)。

 LSIのインタフェースが、ついに「光」化する。米Altera社が、FPGAに光インタフェースを導入していく方針を明らかにした(図1)。2011年内に試作チップを用いたデモンストレーションを実施し、2012年以降に製品化する予定である。高精細ビデオ転送やクラウド・コンピューティング、3次元ゲーム、高性能ビデオ監視などの用途に向ける。これらの機器において、メイン・ボード上のLSI間配線の他、筐体間配線など、広範囲に適用する。

 LSI伝送の光化については、米Intel社なども模索中だ。Intel社はかねて、光信号でデータをやりとりする技術「Light Peak」の開発を進めている。ただし、同社が2011年2月に発表した最大10Gビット/秒の高速インタフェース「Thunderbolt」では、光伝送を利用せず、従来の電気信号を採用している。Intel社もゆくゆくはThunderboltに光配線を導入する見込みだが、Altera社がLSI伝送の光化で先んじる可能性が高まった。

図1  LSI伝送の光化が始まる
ボード上の配線を電気のみで構成する場合(a)と、光配線を導入する場合(b)について、特徴を まとめた。
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「対症療法」から「根治療法」へ

図2 電気配線はもはや限界
従来の電気配線では、高速化とともに伝送損失が増大する(a)。伝送損失による信号劣化を補うために、イコライザなどのアクティブ 回路をLSIに搭載するといった対策が取られている。高周波数化に伴い、その対策はどんどん難しくなる(b)。
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 Altera社がいち早くLSIへの光インタフェース導入に踏み切った背景には、高速化の限界打破に向けた強い思いがある。同社によれば、例えば40cm程度の距離を伝送するバックプレーン接続などにおいて、従来の電気配線を利用したFPGAの高速化が限界に差し掛かっているという(図2)。高速化に伴い、電気配線部で生じる損失が増大するからだ。

 FPGAの高性能品では現在、1チャネル当たり28Gビット/秒のインタフェースを備えた品種の出荷が始まりつつある。ここで、「1チャネル当たり28Gビット/秒の信号をそのまま送信すると、受信側では波形がほとんど潰れてしまう。そのため、現状では、送信側であらかじめ波形を強調して送る『プリエンファシス』や、受信側で波形を調整する『イコライザ』といった複雑な回路をFPGAに組み込んで何とか対応している。ただし、これらの手法を利用しても28Gビット/秒を超える高速化はそもそも難しそうだ。この限界を、光伝送で打破したい」(日本アルテラ)という。