1989 年に米国市場へ投入されたレクサスLS は,高級セダンとして その地位を確立し,その後,セルシオとして日本市場をも席巻する。そ れから11年。世界共通のブランドとなったレクサスの旗艦車種として の重責を担って,4代目LSの開発が始まった。
レクサスLSの開発
目次
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最終回:白い対向車
【前回のあらすじ】レクサスブランドのフラッグシップである「LS」の,さらにフラッグシップとして位置付けられるクルマが高性能パワートレーンを搭載した「LS600h」と,そしてロング・ホイールベースとした「LS600hL」である。高性能パワートレーンとして5.0LのV型8気筒エンジンと高出力モータを組み…
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第9回:雪上の疾走
【前回のあらすじ】4.6LのV型8気筒エンジン,8段変速トランスミッション,人の検知や後突にも対応したプリクラッシュ・セーフティー・システム―と,レクサスのフラッグシップたらしめる先進技術を投入した「LS460」は完成した。LS460の新車発表会当日,チーフエンジニアの吉田守孝はひと時の安息感に包ま…
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第8回:最後のテストコース
【前回のあらすじ】衝突の危険性を察知して回避の可能性を高め,衝突が避けられないと判断した場合には被害を最小限に抑えるべく安全装備を作動させる―。この「プリクラッシュ・セーフティ・システム」ではまず,ミリ波レーダとステレオカメラを併用して歩行者の検知を可能にした。さらに目指したのが,衝突回避の可能性を…
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第7回:執念
前回のあらすじ】4.6LのV型8気筒エンジンと8速自動変速機の組み合わせによって,レクサスLSの走りは十分に満足いくレベルになると,チーフエンジニアの吉田守孝は確信した。そんな走りに加えてもう一つ,ぜひとも次期LSで実現したいもの,それが世界最高レベルの安全性の高さだった。衝突事故による被害を極力減…
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第6回:逆転の発想
【前回のあらすじ】2003年9月,ついに8速自動変速機(AT)の開発プロジェクトが具体的に動きだした。事前に実現の可能性を検討したとはいえ,量産を考慮した上での設計を進めていく中でさまざまな課題を克服しなければならなかった。その一つが軽量化である。初期段階の試算では,8ATの質量は110kgと目標値…
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第5回:身を削る
【前号のあらすじ】限られた開発期間,乗用車で世界初となる8AT,しかも新開発エンジンと同時投入―は,トランスミッションの開発陣にとって未知の領域への挑戦だった。8ATの投入を決断するか否か…。トヨタ自動車とアイシン・エィ・ダブリュ(AW)のプロジェクトチームは,100種類以上の機構案を詳細に検討し,…
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第4回:1/100に懸けろ
レクサスLSにふさわしいエンジンに求められる高い静粛性。電気モータで駆動する可変バルブタイミング機構「VVT-iE」の実用化では,この音の問題が最も大きな障壁となって立ちふさがった。従来の油圧駆動へ戻すという最悪の事態も覚悟した中,試行錯誤の末にたどり着いたのが,音が目立ちやすいアイドリング時におい…
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第3回:起死回生の一手
LSのために新開発するV型8気筒エンジン。インジェクタを各気筒に二つ設置するという「D-4S」に加え,もう一つの目玉となる新技術が加わろうとしている。それが,可変バルブタイミング機構をモータによって制御する「VVT-iE」だ。ところが,VVT-iEの実用化には「騒音」という大きな壁が立ちはだかってい…
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第2回:頂ははるか遠く
トヨタ自動車「レクサス」のフラッグシップである「LS」は,ブランド価値を高めるだけでなく収益も大きく伸ばさなくてはならない。チーフエンジニアの吉田守孝はホイールベースのロング化に加えて,高性能パワートレーンの導入を決意する。高性能化の手段は,エンジンとモータを組み合わせたハイブリッド・システム。その…
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第1回:賢いクルマ,賢いやり方
2006年9月19日。東京渋谷区にある新国立劇場。夕方から降り出した雨に,目の前の甲州街道の路面は濡れ,行き交う車のヘッドライトの光がキラキラと反射する。時計の針はまもなく午後6時を指そうとしていた。