日経エレクトロニクスの2011年10月18日号に、ワールド・レポート「工場の立て直しのカギは従業員との人間関係にあり」(pp.17-20)と言う記事を執筆したが、その反響の大きさに自分自身、驚いている。

 いかに日本企業が中国で苦労しているかを、その後頂いたメールの文面から再確認できた。特に私が勉強したのが、「ピンハネ、中抜きは中国だからというだけではないですよ。台湾の中小企業でもけっこう同じ状況ですよ!」という、台湾の中小企業に勤務されている某氏からの連絡だった。

 私は本記事の中で、「職権を利用したわいろ、ピンはね、中抜きは、残念ながら中国の日常風景である」と指摘した。この指摘に対して、台湾企業に勤務する読者が報告してくれたのだ。私は早速、同氏に連絡を取った。すると、「台湾でも、中小企業ではいまだにリベートの要求、裏金の処理が中国と同じに行われています。これは別に中国特有ではありません。まあ、台湾では、明らかによくないことをしていると言う意識はあるようですが・・・・」と説明してくれた。

 彼とは、「教育こそが武器で、(異国でのビジネスにおける)戦闘は常に風上に立ち、攻めるのが必勝法!」という点でお互いに盛り上がった。中国は、街がきれいになってきたら、「少しは変わるであろう」と言う点でも同意見だった。

 さて、その後我らが中国シンセン工場は、なんと私の4代目のアシスタントが結婚のために国に帰ってしまい、ついに5代目のアシスタントの教育に取り掛かっている最中である。今回は新しい試みで、インターネットを使って教育するという手法にチャレンジしている。肝心の品質の方は、インターネットで管理できるようにしたことが功を奏して、不良率は毎月0.5%ほどで推移しているので、まあまあ合格レベルと言えるだろう。

 それにしても便利な世の中になったものだ。インターネットを使いこなせば、ほとんどリアルタイムで工場の現場マネージメントが世界中どこからでもできてしまう。仕組みづくりと、人間の教育を「きっちりやっておけば」、工場現場の維持・管理がここまで可能であるとは、実行者の私自身が驚いている。
 日本の標準化技術、教育・人材育成の歴史的インフラ、そして「Process Commonarity」という世界的広がりの概念、インターネットという強大なツールとの融合利用・・・。間違いなく世界は時間軸が縮まり、人間に適応することを要求している。そういう意味では中国のみならず新興国との協業は新しい概念と手法を我々に要求し、日本はこれらに応えていく責務を求められているのかもしれない。