「GOPAN」の構造
こね羽根用モータとミル羽根用モータの二つを本体に装 備した。クラッチを介してモータの切り替えが可能である。

米を水に浸してペースト状にするという方法を見いだしたホームベーカリーの開発陣。
商品化を加速させるため,回転器事業を手掛ける加西事業所の協力を得る。
2008年末には鳥取から加西に技術者を送り込み,ミル機能の内蔵化を進めていた。

改良したミル羽根。右が開発当初の形状,左が最終形状。
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三洋電機コンシューマエレクトロニクス 家電事 業部 製造統括部 技術三部 技術二課の渡邉隆氏

 米からパンを作れる新ベーカリーにミル機能をどう内蔵するのか。その開発に転機が訪れたのは2009年春だった。三洋電機コンシューマエレクトロニクスの加西事業所の若手技術者が市販のスティック・ミキサーを使って水に浸した米を粉砕したところ,なかなか良いペースト状態となったのだ。これを参考に,傘のような形状を持つカバーの中にカッター式のミル羽根を装備し,傘部分の上部にパン生地をこねる「こね羽根」を取り付けて一体化した部品を考案する。

 ただし,こね羽根では約400回転/分と低速ながらパン生地を強くこねる必要があるのに対し,ミル羽根では約6300回転/分と非常に高速で米を切削する必要があった。そこで,ミル羽根の回転とこね羽根の回転を一つの回転軸で実現させるため,回転方向の正逆で回転数を変えることを思い付く。こね羽根用のモータとミル羽根用のモータの二つを本体に装備し,クラッチを介してモータを切り替えることにしたのだ。

 ちょうど時を同じくして,開発体制でうれしい誤算があった。組織が大幅に変更され,鳥取三洋電機が三洋電機コンシューマエレクトロニクスに吸収されたのだ。これにより,鳥取事業所と加西事業所は同じ会社となり,人材交流などがやりやすくなった。