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狩集 浩志=日経エレクトロニクス
2011/05/04 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2010年12月27日号 、pp.206~208 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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(写真:的野 弘路,伊達 悦二)

米を粉にする方法の開発を2005年春から始めた開発陣。 花こう岩を用いた電動臼でひいた粉は粒度こそ細かくなったものの パンとしてうまく膨らまず,商品化のレベルには達しない。 開発を開始してから既に,2年以上の月日が流れようとしていた。

ホームベーカリー開発の取りまとめ役だった,白井吉成氏(左)
2005年春から米を粉にする開発を担当していた,早勢正雄氏(右)

 「何をやっても,うまくいかない」─。「新ベーカリー」の開発は,行き詰まりを見せていた。そして,有効な解決策がないまま迎えた2008年初頭,米をひくことが可能な市販の電動ミルがあることを知る。

 ホームベーカリー開発の取りまとめ役だった白井吉成(現・三洋電機コンシューマエレクトロニクス 家電事業部 製造統括部 技術三部 担当部長)と,米を粉にする開発を担当していた早勢正雄(元・同社 同事業部 同統括部 技術三部 技術二課 課長)は,藁にもすがる思いで購入し,すぐに試した。すると,思ったよりもいい粉ができる。

 ただ,問題も山積みだった。3回ほど繰り返してひかないと,細かい粒度の粉にはならない。その上,電動ミルの作動音がものすごくうるさかった。

 それでも,これが最後の望みとばかり,電動ミルを市販していたメーカーとの共同開発を進めた。だが,それも頓挫してしまう。粉の品質がどうしても安定しないのだ。これではとても商品化はできない。

これまでで一番おいしい

 「もう無理だ」と二人があきらめていた2008年春。鳥取三洋電機(現・三洋電機コンシューマエレクトロニクス)の商品企画会議で,運命のときが訪れる。それは,炊飯器を長年手掛けていた下澤理如(元・三洋電機コンシューマエレクトロニクス 家電事業部 部長)が発した一言だった。

「炊飯器みたいに,米を水に浸したらどうなるの?」

「えっ?」

「だって,ベーカリーでも後から水を入れるわけだから,その水を先に使えないかな」

 下澤は“お米博士”と呼ばれるほど,米に関する知識と経験を兼ね備える人物だった。下澤は,米を水に浸せば,軟らかくなることを知っていたのだ。軟らかい米を使えば,何とかなるのではないか。その後,下澤は自らパンを試作してみせた。米は粉にはならないもののペースト状になり,パンとして焼くことができたのだ。それを,ホームベーカリーの担当者たちに食べてもらう。

「おいしいでしょ?」

「これまでで一番の出来だねえ」

「というか,市販の米粉を作ったパンよりも断然おいしいですよ」

 白井と早勢はその味に驚く。米を粉にすることばかりを考えてきた早勢は,パンができたうれしさよりも,粉にしなくてもパンになるという事実にあぜんとしてしまったという。3年をかけて成し得なかったものが,ふとしたアイデアでブレークスルーした瞬間だった。

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