NFCでは,携帯電話事業者の“足かせ”から解放されることで,従来のFeliCa搭載携帯電話機以上の進化を期待できる。

 最初に普及するとみられる用途が,2台の携帯電話機をかざしてデータを交換する「双方向通信」である(図6)。ユーザーが互いにNFC搭載携帯電話機を持っているだけで利用を開始できる上,高度なセキュリティーが求められないため,サービス展開に向けた制約がほとんどない。

図6 NFCを使ったアプリケーションの拡大
従来の非接触ICカード・サービスでは携帯電話機内部の暗号処理機能と,店舗に設置されるリーダー/ライターなどのインフラが前提になっていた。今後は,携帯電話機内での暗号処理を必要としない新しい用途が広がっていく。
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 双方向通信を使った用途としては,携帯電話機をかざし合っただけで名刺情報が交換するもの,あるいはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の友人関係を構築するものなどがある。この他,ユーザー同士でのクーポンの交換や,位置情報の交換などにも使われるようになるだろう。

情報発信コストが劇的に下がる

 次に普及するとみられるのが,非接触ICタグの活用である。

 非接触ICタグを使った最も一般的なアプリケーションは,紙の媒体とWebページを関連付けるスマート・ポスターである。利用者がNFC搭載携帯電話機を,ポスターの上に貼ってある非接触ICタグにかざすと,タグの中に書き込まれたURLのWebページが開くというものだ。

 実はFeliCa搭載携帯電話機向けのサービスにも,ポスターなどにかざすとURLが送られてWebページが開く「トルカ」というサービスがある。しかし,この場合はポスターに仕込まれたリーダー/ライターから携帯電話機のメモリ領域にデータを書き込む形で実現しているため,10万円程度の高価なシステムをポスターごとに用意する必要があった。それが,NFCの非接触ICタグなら100円程度で購入できることから,ポスターなどに情報を付加しやすくなる。

 さらに,何も情報が書かれていない非接触ICタグである「ホワイト・タグ」があれば,ユーザーがスマートフォンからタグに,自由自在にデータを書き込めるようになる。そうなれば「紙に映像や画像,音楽などを付け加える新たなユーザー体験を提供できるようになる」(米XtreamSignPost, Inc.,CEOのMonto Kumagai氏)。例えば,絵はがきに非接触ICタグを仕込んでおき,ここに映像や画像のURLを埋め込んで先方に送るという使い方も広まりそうだ。

 非接触ICタグが身の回りに一般に貼られるようになれば,貼られた当初の意図とは別の目的に使う動きも出てくる。