初代のiPadがカメラを備えていないことへの解決は不可欠だった。またiPadの画面をHDMI経由でテレビに表示させる機能「video mirroring」はユーザーに役に立つと思う。端末をスリムにして,工業デザインも改善した。初代と同じ価格でありながら,製品の魅力は向上した。これは,米Apple社にとっては「ホームラン」であり,市場において多数売れるだろう。

 一つ気になることがメモリ容量だ。カメラを搭載することで,動画を保存するためのメモリ容量が必要性となる。今回,メモリ容量は増やさなかったのだが,価格を考えたうえで,現在の市場には必要ないと考えたのだろう。ただし「iPad 3」が登場するときは,メモリ容量を増やすと予測できる。

 Apple社は,タブレット端末市場を重視しており,この市場を支配しようとしている。「iPhone」や「iPod touch」,「iPad」といったiOSが搭載された製品のエコシステムの良い仕組みを利用して,第三者のソフトウエア・アプリケーション開発者にプラットフォームの魅力を感じさせる。これにより,他社と比べてiPad向けアプリが多く存在することになる。消費者にはAppleのブランド力が浸透している。こういった背景があっても,iPad 2の部品コストはiPadの初代バージョンよりも,高いとのコンセンサスがある。結局,Apple社は市場がまだ早い段階でも,積極的な動きをみせているわけだ。

 Apple社のブランドの強さがあれば,たとえ能力が優れている競合製品が登場したとしても,市場で勝つのは難しいだろう。価格がiPadと比較して20~30%安ければ,消費者は興味を示す。しかし,Apple社は市場で多く売れると自信を持っているので,部品を大量に注文できる。部品に関する費用で優位にたてるので,競合企業は非常に困るであろう。(談,聞き手はPhil Keys=シリコンバレー支局)

Chetan Sharma
米Chetan Sharma Consulting社,Founder兼President
世界最大級の携帯電話事業者6社にコンサルティングを行った経験を持つ。中国China Mobile社やNTTドコモ,韓国Samsung Electronics社,米The Walt Disney社などを顧客に持つ。