テレビ: 受託生産台数で世界2位に

 2009年に,Hon Haiグループのテレビ生産台数はたった40万台だった。それが,2010年には850万台に急拡大しそうだ3)。台湾系の香港TPV Technology Ltd.に次ぐ受託台数である。これは投資攻勢のたまものだ。2009~2010年には,ソニーのメキシコとスロバキアのテレビ工場を購入注5)。さらに,Hon Haiグループの台湾Innolux Display Corp.(群創)が,より規模が大きな台湾Chi Mei Optoelectronics(奇美電子)社を吸収合併した。

参考文献
3) 鳥居,「生き残りをかけて競争激化する,液晶テレビのOEM生産」,http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20101021/186717/

注5) Hon Haiグループとソニーの関係は,すべてが円満というわけではない。2010年7月には,Chi Mei Innolux社が特許侵害を理由に米国と中国でソニーを訴えた。ソニーが先に特許係争を始めた経緯から考えると,Hon Haiグループはそれを有利に進めようと考えた可能性がある。「Hon Hai社には事業部の『穏便に』という意向を抑えて裁判に持ち込む,戦闘的な知的財産権/法務担当部門がある。その人数はグループ内で400人に達している」(台灣國際專利法律事務所の果榮宇氏)。

 こうした規模を追求した買収を,Hon Haiグループの郭氏は近年重視している。例えば,ソニーがLiイオン2次電池事業の売却を検討していた2007年ごろ,郭氏は「パナソニックと三洋電機のLiイオン2次電池事業も一緒に買えるなら買うと発言した」(Hon Haiグループの元社員)という。

その他の既存事業: 3大ゲーム機を製造

 家庭用ゲーム機に関しては,「PlayStation3」,「Wii」に加えて「Xbox 360」の製造も手掛け始める可能性が高い。「Nokia社の調達担当者が米Microsoft Corp.に転職したのがきっかけ」(Hon Haiグループの元社員)という。ライバル企業がこぞってHon Haiグループに委託しても問題にならないのは,ソフトウエアがゲーム機の魅力を決めるからだろう注6)

注6) ただし,家庭用ゲーム機メーカーは複数社からハードウエアを購入している。PlayStation3はPegatron社から,Wiiはホシデンなどから,Xbox 360はFlextronics社から,それぞれ調達している。

 機器分野で唯一不調なのは,デジタル・カメラである。Hon Haiグループは2006年,受託生産台数で当時世界トップクラスだった台湾Premier Image Technology(普立爾)社を買収した。しかし,2010年の受託生産台数は,台湾Ability Enterprise Co., Ltd.(佳能)と台湾Altek Corp.(華晶)に続く世界3位にとどまる見込みだ。買収先の経営者をHon Haiグループの幹部にすることもかなわなかった。2010年夏には,旧Premier社の董事長と総経理だった人物が退職した。

 部品分野では,かねて高シェアを誇るコネクタで規格策定を主導するようになった。対象は,「USB 3.0」や米Intel Corp.が推進する光インタフェース「Light Peak」のコネクタ仕様である。さらに,中国版HDMIと呼ばれる「DiiVA」の小型コネクタをいち早く試作し2010年11月に公開した4)

参考文献
4) 根津,「Hon HaiブースでDiiVAやLight Peak用コネクタについて聞いた」,http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20101118/187466/