新型機で採用した2次電池モジュールに搭載するセルは,6個に分割されている(図6)。3種類の大きさのセルを用いており,「限られたスペースにできるだけ多くの電池を詰め込みたかったのだろう」(パソコン・メーカーの技術者)との推測が成り立つ。

図6 ラミネート型セルを6個に分けた
大きさの異なる3種類のラミネート型電池セルを組み合わせてモジュールにした(a)。最厚部は6.3mmと,初代機の6.8mmから,さらに薄くした。13型品では,同形のセルを4個用いて容量を50Whにしている(b)。(図:(b)はApple社)

 さらに,小さなセルの方が製造の歩留まりは高く,コストを削減しやすい上,安全性も高められる。セルは,「iPad」など多くのApple社製品に供給している,TDKグループの香港Amperex Technology Ltd.(ATL,新能源)製である。

見た目へのこだわりは健在

タイトル
図7 表面からは見えない穴がある
カメラが作動していることを知らせるためにLEDを搭載しているが,LED消灯時はどこに穴があるかを判別できないように工夫した。このために,光を通す樹脂で穴を埋めて,さらに表面処理を施す手間をかけているようだ。

 新型機では,デザインにこだわるApple社らしい姿勢がうかがえる部分もあった(図7)。ディスプレイの周りを囲む化粧板において,カメラが作動していることを知らせるためのLEDの見せ方を工夫している点である。

 表から見ると全く穴の存在に気付かないが,裏から見ると確かに穴がいくつも開いており光を透過させている。穴は極めて微細だが,貫通していない。恐らく,樹脂で穴を埋めているとみられる。分解に参加した技術者は「ここまで穴が小さいと,真空引きしないと樹脂を流すことはできないだろう」と,Apple社の徹底ぶりに感心する。樹脂を流し込んで平坦化した後,上から表面処理を施しているようだ注3)

注3) 化粧板の外枠の材料には厚さ0.4mmと薄いAl製の板材を用いた。この板材の外周部のみ厚さ0.2mmほどに薄くし,ここにゴム製のパッキンを装着した。こだわりを込めつつも,薄型化に向けた努力で抜かりはない。