米Apple Inc.が2年9カ月ぶりに「MacBook Air」のフルモデルチェンジを実施した(表1)。初代MacBook Airは2008年1月に登場した超薄型ノート・パソコンで,最薄部が4.0mm,最厚部でも19.4mmと,当時としては常識外れの薄さで世界をアッと 言わせた機種である1)

表1 2年9カ月ぶりのフルモデルチェンジで11型品を投入
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 2010年10月に発売した新型機では,最薄部は3.0mmで最厚部は17.0mmと,一層の薄型化を進めた。さらに,初代機と同じ13型液晶ディスプ レイを備える機種に加え,一回り小さな11型品を用意した。11型品の重さは約1060gで,初代機の約1360gに比べて軽量化を果たしている。価格 は,11型品が8万8800円からと,当初22万9800円からだった初代機よりも大幅に引き下げた。

パソコン市場の激変がきっかけ

 Apple社がMacBook Airのフルモデルチェンジを決断した背景には,パソコン業界の劇的な構造変化がある。すなわち,台湾ASUSTeK Computer Inc.の「Eee PC 701」の発売に端を発したネットブックの台頭である。

 Apple社がMacBook Airの初代機を投入した2008年1月の時点では,大型の液晶ディスプレイを搭載した高機能のノート・パソコンが主流だった。ところがその後,ネット ブックが低価格で小型という特徴を武器に急激にシェアを伸ばすことになる。現在,その勢いに一服感こそあるものの,ノート・パソコン全体の販売台数の 20%近くを獲得するまでに市民権を獲得した2)

 ユーザー・ニーズが大きく移り変わるタイミングで登場したMacBook Airの初代機は「薄くて持ち運びはしやすいが,高い」との評価を受け,苦戦を強いられた。2008年1月下旬に開かれた決算説明会の席で「これまでのと ころ,受注は極めて好調だ」(同社)と順調な滑り出しに自信を見せていたApple社にとって,その後の展開は,誤算だったようだ。