片面実装で薄型化

 実装面での最大の特徴は,メイン基板にある(図2)。メイン基板は片面実装となっており,これがVAIO Xの薄さに寄与している。「本来であれば,パームレスト部の下が,最もスペース的に余裕がある。しかし,消費電力と電池容量を考えると,この最もおいしい部分を電池に渡すしかなかった」(ソニーの林氏)。すなわち,スペースに比較的余裕がないキーボードの下に収めるためには,メイン基板を片面実装にする必要があったわけだ。「部品が片面に集約されている分,配線に制約が増える。それを,この面積に収めているところがすごい。そこまでして薄くしたかったのだろう」(分解に協力したパソコン・メーカーの技術者)。

図2 メイン基板
片面にすべての部品を実装した。最も背が高い部品はUSBコネクタの5.9mm。背が低いDRAMの高さは2.1mmである。
[画像のクリックで拡大表示]

 林氏は,「片面実装は配線が大変な面はあるが,それ以上に基板の反りが問題だった」と語る。詳細は明らかにしなかったが,設計と製造の両面で工夫しているという。

 この基板の反りを含め,片面実装の採用に伴う技術課題は,同社の製造部門と緊密に連携することで乗り切ったという。一例を挙げよう。VAIO Xでは,片面実装した結果,コネクタ類がすべて基板の表面側に配置されてしまった。これは,本体に組み込む際の作業性を著しく低下させる。「本来コネクタは作業時に見えるべきものであり,一般的にはあり得ない。薄さに対するこだわりが,ここまで踏み込ませているのだろう。製造工場が相当協力しているのではないか」(パソコン・メーカーの技術者)。

 ソニー自体もこの設計が「本来は禁じ手」(林氏)であることを認める。他のメーカーに製造を委託する場合には,このような設計手法は採れない。だが,VAIO Xはソニーイーエムシーエスの長野テックで製造している。「設計陣は1年程度,長野テックに常駐した。設計の初期段階から製造側と協力した。設計側だけでなく,製造側からもアイデアを出してもらうことによって課題を解決できた」(林氏)。