子供の頃(1970年代)に見た新聞の一面広告に,飛行機や船,自動車など,さまざまな乗り物が合体した,いわば“万能マシン”の絵が描かれており,「私たちはこのようなオールマイティな製品をご提供するものではございません」といったメッセージが添えられていたのを,今でもハッキリと覚えている。「そうか,万能なことがいつも正しいとは限らないんだ…」と子供心には思ったものである。

 エレクトロニクス技術の革命的な進歩により,巷にはデジタル音楽プレーヤーやICレコーダー,スマートフォンやケータイ,携帯ゲーム機,デジタル・カメラ,電子辞書など,さまざまな携帯機器が溢れている。これらの携帯機器をどう(文字通り)スマートに使いこなし,明るく豊かな生活を送るのかが,一部のビジネスマンに限らない,ごくフツーの人々にとっての関心事になっている。

 こうしたガジェットをよくよく眺めていると,“独創的で目新しい機能を提供するもの”が増える一方で,“いくつかの電子機器類を便利にまとめたもの”への欲求が確かに存在することがわかる。以前から噂されていた,プレイステーション・プラットフォームを組み込んだスマートフォン「Xperia PLAY」が正式に発表されたことには,1ゲームユーザーとして素直に喜びたい。果たして,Xperia PLAYはどちらのグループに属するのだろうか?(今のところは,後者のような気がしてならない…)

 Xperia PLAYが,ソニー・コンピュータエンタテインメントのAndroid端末向けゲーム提供サービス「PlayStation Suite」に対応したことは,初代プレステの発売日に,「リッジレーサー」と一緒に購入した世代にとって嬉しいものだ。しかも今後,ゲームのプラットフォームが急速にソーシャル・メディアへシフトすることを見通しているのであれば,来るべきモバイル市場への対策に余念がないことも見逃せない。

 現時点で,ソーシャル・メディアとひと括りにされているものが,近い将来には機能別に分化し,さまざまなプラットフォーム上で発展していくことが十分考えられる。一緒になって世界を広げていくコンテンツ・パートナー次第ではあるが,その中にはXperia PLAY(そして「Next Generation Portable(NGP)」(コードネーム))の担うべき分野が,間違いなく存在するだろう。

宮澤 篤
東京工芸大学 准教授 (2011年4月着任予定)
東京工芸大学 芸術学部 ゲーム学科において,Web/ソーシャル・メディアや教育メ ディアへのゲーム学応用,3Dや拡張現実感(AR)など,先端映像コンテンツの研究開発を進める。