「Xperia PLAY」の写真を見て最初にイメージしたのは,“ウエアラブル・ゲーム機”である。いつも身につけ,あたかも体の一部であるかのようなコンピュータを指す言葉だ。これを持つ個人との相互関係を総称し,“ウエアラブル”が用いられて久しい。

 しかしながら,ファッション性や操作性,機能,コンテンツ,サービスなどがバランスよく,実用的でコンパクトにまとまった商品はまだない。ケータイやスマートフォン,携帯ゲーム機,ICカード(電子マネー)などがその範疇に入るのだが,ユーザー視点から見ると今ひとつ実感できなかった。

 これは,“ウエア”から素直に連想する“着る(衣服)”が,上記のファッション性以外の要素を満遍なく持っていることに対する不足感があるためだ(もちろん,対象が異なるので同列比較はできないのだが…)。Xperia PLAYは,“ウエア”をすんなりと納得できる,初めての民生機器という印象を持った。

 Xperia PLAYを「PSPフォン」と称する報道が示しているように,最大のウリはゲームコンテンツを過不足無く楽しめることだ。ファッション性や機能の面でみると,スマートフォンは同質化してきておりコンテンツとサービスで他との違いを出すしかない。その代表(象徴)がゲームであり,Xperia PLAYはそれを強く反映,実装している。

 しかも,ソニー・コンピュータエンタテインメントのAndroid端末向けゲーム提供サービス「PlayStation Suite」に対応し,「PlayStation Certified」(PS Certified)の認証を受けているため,一定の品質が担保されている。一般的に,Android搭載のスマートフォンは,米Apple社の「iPhone」と比べてビジネス面でオープンであり,事実上,審査無しでコンテンツなどを市場に投入できる。敷居が低い半面,動作確認という品質の初歩すらも保証されるわけではない。

 PS Certifiedの認証を受けたことで,Xperia PLAYはコンテンツ品質面での課題はクリアされている。ユーザーに安心感を与えるという点で,課金ビジネスが容易になるだろう。つまり,自由度の高いスマートフォンに一定の秩序を持ち込んだといえる。PS Certifiedの認証は,むしろ秩序を持たせる方向に振ったことになろう。まさに,「伽藍とバザール」の対比そのものである。

 ウエアラブルの具現化と,伽藍とバザールの同居こそが,Xperia PLAYの魅力であり特徴である。同居する故に,あえて「PSP」をネーミングとして使わなかったし,秩序の上で成り立っている「Next Generation Portable(NGP)」(コードネーム)との根本的な違いがそこにある。

細川 敦
株式会社メディアクリエイト代表取締役
日本交通公社(JTB)勤務を経て,1994年に株式会社メディアクリエイトを創業。その後,一貫してテレビゲームのマーケティングやコンサルティングに従事する。テレビゲーム商業組合理事。