前編より続く

「こんな単純なミスに気付かなかったとは…」

三洋電機 デジタルシステムカンパニー DI事業部 DI企画部 DI企画課の坂地 亮氏(左)と,同事業部 設計一部 機構設計課 担当課長の鈴木茂樹氏(右)。

 2007年3月,「Xacti」の完全防水モデルを開発していた三洋電機の坂地亮(現・デジタルシステムカンパニー DI事業部 DI企画部 DI企画課)と鈴木茂樹(同事業部 設計一部 機構設計課 担当課長)は,ぼうぜんとしていた。その手には,発売を3カ月後に控えた量産試作機が握られていた。最後の社内テスト。まさかそんなタイミングで,撮影中にグリップ部のフタが自然に開いてしまうトラブルが判明するとは,思ってもみなかった。

 フタの内部には電池やSDメモリーカードが収納してある。水中撮影中に開けば,当然ながら故障する。試作機はレバーによってフタにロックをかける構造だったが,レバーが大きすぎ,握って操作をしているうちにロックが外れてしまうのである。坂地らは,完全防水という課題に集中するあまり,こんな簡単なミスに全く気付けなかったのだ。

 それほどまでに,完全防水モデルの開発は難しかった。素材の選定からパッキンの構造,防水テストの方法に至るまで,すべてが手探りだったからだ。

液晶モニターのヒンジがさびる

 話は2006年にさかのぼる。鈴木は,塩水に対して耐久性の高いステンレス素材を探し回っていた。完全防水モデルは海の中でも使えることを前提としたからだ。Xactiは本体と液晶モニターをつなぐヒンジにステンレス製の部品を使っており,海水に触れるとさびてしまう可能性があった。