COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第5回:このデザインでなければ商品化する意味がない(上) 

木村 雅秀=日経エレクトロニクス
2011/03/08 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2009年4月20日号 、pp.126-128 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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前編より続く

「これは無理だ」─。

 高橋聖夫は,「ラベンダー」のグリップ型デザインを見た瞬間,そう直感した。ラベンダーとは,三洋電機の動画デジカメ「Xacti DMX-C1」の開発名である。その回路設計を任されたのが,高橋(現・デジタルシステムカンパニー DI事業部 設計一部 回路設計課 担当課長)だった。

 まず,レンズ部とグリップ部を斜めに配置した拳銃のような形状が問題だった。筐体内部にデッド・スペースが生じやすく,長方形の一般的なデジタル・カメラに比べて実装密度を高めにくい。しかも,液晶モニターは2軸のヒンジで折り畳む構造である。その分,メイン基板を搭載する本体側の空間は削られてしまう。そこに発熱量の大きいMPEG-4チップを載せることは,かなり困難と思われた。

 この無謀なデザインを考案したのは,カンパニー・トップが推進する横断化プロジェクトのチームである。このプロジェクトでは,自由な発想を阻害しないように,チームから回路設計者を外したという経緯があった。自分の知らないところで作られたデザインを突然押し付けられた高橋に,反感がなかったと言えばウソになる。

 高橋は,感情を排して問題点を具体的に示すため,CADを使って筐体内部に部品を仮配置した図を作成した。図面を見れば,無理は明白だった。メイン基板やCCD基板,液晶モニター,ヒンジ,Liイオン2次電池といった主要部品が,すべて筐体からはみ出していたからである。特に,メイン基板は筐体から 20mmも飛び出していた。高橋はこの図面を携えて,横断化プロジェクト・チームのリーダーである重田喜孝(現・マーケティング本部 アドバンストデザインセンター デジタルシステムデザイン部 部長)に直談判に行く。デザイン変更を要請するためである。

三洋電機 マーケティング本部 アドバンストデザインセンター デジタルシ ステムデザイン部 部長の重田喜孝氏(左)と,同社 デジタルシステムカンパ ニー DI事業部 設計一部 回路設計課 担当課長の高橋聖夫氏(右)。

 しかし,図面を見ても重田は動じなかった。それどころか,静かにこう言った。「このデザインでなければ,商品化する意味がないんですよ」─。横断化プロジェクトを率いてきた重田は,今回のデザインなら絶対に売れると確信していた。商品化に反対する事業部長を幾度となく説得する過程で獲得した自信は,少々のことでは揺らがなかった。データによる裏付けもあった。150人を対象に実施したアンケート調査で半数以上が今回のデザインを支持した事実も,重田に勇気を与えていた。

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