「せーの,バンザーイ,バンザーイ,バンザーイ」

 歓声がとどろいたのは日立製作所の多賀工場。白い約束は発売と同時に大ヒットとなる(図5)。「イオン洗浄=高い洗浄力=日立」という評判が店頭の販売員に浸透しつつあったのに加え,さらに,他社と同等の機能も実現できるようにと機能の合わせ技を使ったのが功を奏した(図6)。

図5 洗濯機の国内台数シェア
(a)出荷台数ベースのシェア推移。1996年~1998年は日本経済新聞社「市場占有率2000年版」,1999年は2000年7月28日発行の日経産業新聞のデータである。(b)日立が松下のシェアをわずかに上回りナンバーワンに。(図:(a)は日本経済新聞社のデータを基に日経エレクトロニクスが作成,(b)は2000年7月28日発行の日経産業新聞から)
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図6 松下も洗浄力をアピールする戦略に
松下電器産業の洗濯機のカタログ。2000年秋発行号の表紙である。「洗浄力の日立」に対抗すべく「洗浄力ならナショナル!」のうたい文句で巻き返しを図る。(写真:日経エレクトロニクス)

 多賀工場の面々が歓声を上げれば,常陸多賀駅前飲食店街のオヤジも喜ぶ。

「いやいや,今日はみなさんおそろいで,何かあったんですか?」

「洗濯機がパーッと売れちゃってさぁ。そんでもって鹿森さんもパーッと昇進しちゃって,そのお祝いってわけ」

「今度の製品,すごい売れてるらしいですね。この前ね,タクシーの運転手の方が来て言ってましたよ。多賀工場始まって以来の大ホームランじゃないかって」

「いやいやそれほどじゃあ,ハッハッハ」

「洗濯機もパーッと売れたことだし,今日はめでた・い・の鯛を尾頭付きでパーッといきますか。そうそう,伊勢海老ありますよ。え?お嫌い?じゃあ…ウニ。これいきましょう。今日はいいのが入ってるんですよホント,偶然なんですけどね,いやいや…」

 夏の夜の宴うたげは,朝日が昇るまで続いたらしい。

――おわり――