図2 リフレッシュには塩が必須
イオン洗浄洗濯機に使うNa型強酸性陽イオン交換樹脂は,塩を使ってリフレッシュする。Naイオンと樹脂の高分子基体を結合させるためである。こうすることで,高分子基体に結合したCa2+イオンやMg2+イオンを取り除き,イオン交換樹脂を元の状態に戻す。Ca2+イオンが結合した高分子基体Rと塩化ナトリウムNaClとの反応式は,R(SO32Ca+2NaCl→R(SO3Na)2+CaCl2である。なお,写真の人物は,電化機器事業部 事業企画部 部長代理の澤田昌司氏。洗濯機の今後の事業展開を練る仕事に従事する。(写真:左上は本社映像部,右下は日経エレクトロニクス)

 用意してあった,プラスチック容器と塩の袋を取り出す(図2)。

「まず,この容器に大さじ1杯ほどの塩を入れ,水道水を注ぎます。この塩は,どの家庭にもある,ごく普通のもので構いません。1kg100円ですから,スポット洗剤などを使ってワイシャツのえり,そで汚れに対処するのに比べれば,大変経済的と言えます」

 次に,洗濯機の内側から別の容器を取り出す。

「このイオン交換樹脂が入った容器にさきほどの容器を,こうして重ねます。イオン交換樹脂の容器は,ご覧いただいたとおり,引き抜いただけで楽に取り出せます」

 そして,重ねた二つの容器を振る。シャカ,シャカ。シャカ,シャカ。幹部席から眺めると,バーの店員がカクテルを作っているかのような光景だ。

「こうしてイオン交換樹脂に塩水を混ぜると,樹脂はあっという間にリフレッシュされます。あとは,こちらの容器を洗濯機に戻せば終了です」

引き下がれない

 リーダの鹿森氏は,幹部の指摘にうなずきながら,それでも反論の機会をうかがっていた。黙ってこのまま引き下がるわけにはいかない。この洗濯機には,高い洗浄力という強力な武器がある。それをなんとかして世に送り出したい。その思いが彼の口を開かせた。