前編より続く

「スゲー,落ちてるよ」
初の洗濯実験で,思わず小池氏が
歓声を上げるほどの効果を発揮したイオン洗浄機能。
開発チームは,この日から2年がかりで試作機を完成させた。
だが,発売3カ月前,最終会議で会社幹部から痛烈な批判を浴びる。
シャカ,シャカ。シャカ,シャカ。
火種は,この会議の席上での,あるデモにあった。

「全自動洗濯機なのに,シャカシャカはないでしょ。そんなことお客さんにやらせるの?」
「塩を使うってのもどうかなぁ。普通の人は,洗濯機に塩を入れるなんて言ったら,さびちゃうんじゃないかって疑うよ」

 幹部席からの容赦ない攻撃が延々と続く。こうしたすべての指摘は,ある一点に集中していた。それは,デモで見せたイオン交換樹脂をリフレッシュするシーンだった(図1)。

図1 イオン交換樹脂をリフレッシュする
最初のイオン洗浄洗濯機の試作品を使ったデモの様子。イオン交換樹脂をリフレッシュする作業の場面である。会議ではこの作業に批判が集中,その結果,発売3カ月前にしてこのデモ機の製品化にマッタがかかった。(イラスト:まつもと政治)

それはまるでカクテル作り

「えー,洗濯後にはイオン交換樹脂をリフレッシュする必要があります。充電式の電池と同じですね。それでは早速,この方法を実演させていただきます。一般の主婦ができる簡単な作業です」