一方,電子ペーパーが優位性を打ち出せる点が(c)の軽さ・薄さである。本誌が2010年2~3月に一部の読者モニターを対象に実施した電子書籍の実証実験におけるアンケート結果からも,その点が電子 ペーパーの強みとして高く評価されていることがうかがえる(図4(a))注2)。
注2) この実証実験は,富士通フロンテックの電子書籍端末「FLEPia」を利用し,60人の読者モニターを対象に実施した。FLEPiaは,カラー電子ペーパーを利用した端末である。
液晶パネル搭載端末は,「重さ」に課題がある。実際,iPad(画面は9.7型)では680gという重さが課題であるとの指摘が多く,その重さの半分近 くがディスプレイに関連する部分で占められている(図4(b))。重い要因は,液晶パネルがガラス基板を利用しており,さらに耐衝撃性の強化のために保護 用のガラスを使っているためだ。
ディスプレイのガラス基板をプラスチック基板などの軽くて耐衝撃性の高いものに変えられれば,この重さの課題は劇的に解消できる。電子ペーパーは,それを実現しやすい。例えば,米Plastic Logic社が2010年6月に発売する電子書籍端末「QUE」は,画面は10.7型でありながら重さは482g。同社が開発した有機TFTを用いた電子ペーパーを 使うことで,軽量化を実現した(図5(a))。さらに,米Skiff社が2010年内に発売する電子書籍端末「Skiff Reader」も,画面は11.5型と大きいが,重さは495g。軽さの決め手は,韓国LG Diplay Co., Ltd.が開発するステンレス基板を用いた電子ペーパーである(図5(b))。このほかにも,富士通フロンテックが8型の電子ペーパーを用いて重さ160gの端末を試作するなどしている(図5(c))。
また,(d)の消費電力についても,電子ペーパーが優位だ。電子ペーパーは表示の書き換え時のみ電力を消費する。動作条件によっても大きく変わってくるが,仕様上ではiPadの電池駆動時間が10時間であるのに対し,Kindleは2週間と長い。