大容量Liイオン2次電池の需要を見込み,世界各国では巨大な生産計画が続々と決まりつつある。既に多くの電池メーカーが,採用する正極材料や負極材料,セパレータ,電解液などを決定済みだ。多くの場合,これまで携帯機器向けLiイオン2次電池で先行してきた日本メーカー製の材料が採用されることになりそうだ。
ただし,日本の材料メーカーはこれで将来を保証されたことにはならない。電動車両向けLiイオン2次電池は,ようやく実用化にこぎ着けたばかり。これから本格的な技術開発競争が始まるからだ。
現在のLiイオン2次電池の性能では,将来の長距離走行可能な電動車両の実現には「物足りない」(自動車関係者)。エネルギー密度をはじめ出力密度,コストや安全面など,まだまだ進化させる必要がある。
特に,自動車業界でCO2削減の切り札として期待を集めるプラグイン・ハイブリッド車や電気自動車では,現在のLiイオン2次電池では電池容積が大きく,コストも合わない。そのため,現在のLiイオン2次電池の材料系を第1世代とすれば,2015~2020年ごろをメドに現行の2倍となる200~300Wh/kgのエネルギー密度を狙える改良型Liイオン2次電池を開発し,第2世代として搭載することを目指す(図1)。
さらに,その先の2030年ごろの実用化を目指し,全固体電池やLi金属電池,Li-S電池,Li空気電池など,ポストLiイオン2次電池の実現に向けた基礎的な研究も世界中で活発化している。
Liイオン2次電池は,正極材料と負極材料,電解液,セパレータなど複数の材料を組み合わせ,電池としての特性をバランスさせる必要がある。単体では性能が高い正極材料と負極材料同士を組み合わせても高い性能が出なかったり,電極材料と電解液との特性が合わなかったりすることも多い。大量生産に向いた新たな材料系を確立するのは容易ではない。
実際,民生機器向けで市販化されているLiイオン2次電池の正極材料や負極材料,電解液の選択肢は,それぞれ数種類程度しかない。だからこそ,有望な材料の組み合わせを確立できれば,非常に大きなビジネスチャンスが生まれる可能性がある。