グラフェンの減光率を示した写真。円形の試料のうち,左の部分がグラフェンなしのSiO2基板,中央部が単層グラフェンをSiO2基板に張り付けたもの,右の部分が2層グラフェンをSiO2基板に張り付けたもの。単層グラフェンの減光率は2.3%だという。写真:University of Manchester
グラフェンの減光率を示した写真。円形の試料のうち,左の部分がグラフェンなしのSiO2基板,中央部が単層グラフェンをSiO2基板に張り付けたもの,右の部分が2層グラフェンをSiO2基板に張り付けたもの。単層グラフェンの減光率は2.3%だという。写真:University of Manchester
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 グラファイト1層分の材料であるグラフェンの研究開発が世界中,猛烈な勢いで進められている。関連する研究論文は2010年は3000本を超えたともいわれる。中でも中国科学院やシンガポールNational University of Singapore(NUS)が,論文数で他の研究機関を大きくリードしている。新材料の開発に強かったはずの日本勢は,やや苦しい戦いとなっている。

 応用面で世界をリードするのは韓国だ。特に韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.は,グラフェンを応用したタッチ・パネルや高速トランジスタなどの研究成果をいくつも発表済みである(関連記事)。

Samsung社は製品への実用化競争でも先頭を進んでいる。グラフェンで2010年のノーベル物理学賞を受賞した研究者であるKonstantin Novoselov氏とAndre Geim氏は,ノーベル賞の受賞講演である「Nobel Lecture」などで,Samsung社がグラフェンを利用した製品群の開発ロードマップを作製していると指摘した。そのロードマップの筆頭にあるのが,グラフェンを透明導電膜として利用するタッチ・パネルである。Samsung社は,2012年にもこのグラフェン製タッチ・パネルを搭載した携帯端末の発売を計画している模様だ。

 既にSamsung社は韓国Sungkyunkwan University(成均館大学)と共同で,30型(対角約76cm)のグラフェン・シートを作製したと2010年6月に発表した。これには世界が驚いた。数十cm角のグラフェン・シートなど夢物語だったためだ。それまでグラフェンの作製例は最大でもせいぜい数mm角~1cm角(韓国では数cm角)でしかなかった。

食品用ラップでいえば10km四方の大きさに