新しいプリンタを発売した場合は通常,われわれ開発陣は営業サイドと一緒になって,ユーザのところに出向いて技術説明をしていたのですが,この「PM-700C」ではそういったことはしませんでした。「そんなことをしたら,かえって売れすぎてしまい,困ってしまう」ってことで。発売後の最大の課題は,そのときの過熱状態をどうやって沈静化させるかということでした――。

「SON」をこれからも…

図5 セイコーエプソンの最新プリンタ「PM-800DC」
1999年10月に発売した。フチなしロール写真プリント機能やディジ・カメ用のメモリ・カード対応ドライブを装備する。価格は6万4800円。メモリ・カード対応ドライブを備えない「PM-800C」は5万9800円。(写真:セイコーエプソン)

 「PM-700C」の大ヒットによって,プリンタ・メーカとしてのセイコーエプソンの地位は揺るぎないものとなる。そして,1年後の1997年11月に「PM-750C」,1998年10月に「PM-770C」,そして1999年10月には「PM-800C/DC」と,次々に新しいプリンタを市場に投入する(図5)。

 いずれのプリンタもそれぞれの前機種に比べると,より速く,よりきれいな画像印刷を実現している。そして,いまや打ち出すインク1粒の量は数plになり,肉眼でそのドットを確認することは難しい。耐光性や耐湿性なども着実に高まっている。ここまでくると「すでに銀塩写真の画質を超えた」との声がユーザから出てきても,何ら不思議ではない。果たして,これからセイコーエプソンはどんなプリンタを開発しようとしているのか…。

 ――技術者として,やるべきことはまだまだいっぱいあります。「より速く,よりきれいに」という点で,「これで終わり」はないんです。ユーザがより使いやすく,どんな紙質にも印刷でき,しかも印刷画像を見て本当に感動できるプリンタ。そして,それが1家に1台ずつある…。そんな情景を一日でも早く実現することが夢ですね。

 ところで「EPSON」っていう社名の由来,知ってます?ウチが1968年に発売した第1号機のプリンタが「EP-101」っていうんです。EPというのは「Electric Printer」の略でね。このプリンタは当時としては大ヒットした。それで「これからもその息子「SON」をどんどん世の中に出していこうってことで,「EPSON」という名前が生まれた。いまの開発陣にとって「PM-700C」はまさに「EP-101」なんです。われわれもこれからその「SON」を続々出していきますよ――。

――終わり――