成熟商品の代表格である掃除機。
約550万台/年の安定した需要を家電各社が
し烈に奪い合う。
主戦場となっているのは,
製品価格が5万円以上の高級機種市場。
1999年~2000年にかけて、40万~50万台/年とされる高級機種市場の,おおよそ半分に当たる24万台を1999年9月の発売後1年で獲得した掃除機がある。
三洋電機の「排気が少ない」掃除機である。
工場生産が間に合わないほどのヒット商品となった
掃除機の開発物語を紹介する。
「排気が少ない」掃除機の開発
目次
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最終回:わかりにくいので売れません(下)
普段から営業担当者は,販売の最前線で厳しい現実を体感している。それが原因なのだろう。結局,「排気が少ない」掃除機の発表は叩かれるだけ叩かれ,ようやく幕が下ろされた。
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第7回:わかりにくいので売れません(上)
ピッチを上げて製品開発を進める技術者たち。しかし待っていたのは,次々に降りかかる技術的課題だった。「手を動かすしかない」,そう腹をくくり彼らは問題に取り組んだ。そして1999年春,苦労が実って製品試作品が完成。吸い込み仕事率は570W相当と当時最高レベルを達成したこの成果を手に新商品会議に臨んだ彼ら…
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第6回:難しすぎるのでお引き受けします(下)
そうはいっても,ホースの仕様を決めないわけにはいかない。技術者たちは,すぐに入手可能なホースを取り寄せては試作を繰り返し,気が付けば1998年も暮が迫っていた。しかし,技術者たちの悩みは解消されなかった。
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第5回:難しすぎるのでお引き受けします(上)
不承不承に「排気が少ない」掃除機の試作機を作った技術者たち。彼らが見たものはこれまでにないほど格好の悪い試作機だった。技術者たちの失望とは裏腹にこの試作機が,「排気が少ないという新たなニーズ」の発見を生んだ。そして,ついには「排気が少ない」掃除機が三洋電機の50周年を祝う「TS商品」候補に抜擢(てき…
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第4回:もっと何か言ってもらいたいんだけど(下)
製品開発といっても,何も決まっていない。仕様もない,還流式掃除機のノウハウもない,何もないのだ。技術者たちの本当の苦闘は,ここから始まった。
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第3回:もっと何か言ってもらいたいんだけど(上)
「特徴のある製品で不毛な吸い込み率競争に終止符を打ちたい」その思いから「排気が出ない」掃除機を立案した企画担当の日向氏。技術者たちに要素技術の検討を強引にのませた。しかし技術者たちに「要素技術的に不可能」という結果を突き付けられてしまう。そこで飛び出したのが,「排気が少ない」掃除機という妥協案。技術…
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第2回:ふんわり,そっと出せばいい(下)
技術者たちの苦労が実り,排気が出ない掃除機の要素技術検討が完了したのは1998年4月だった。さっそく,定例会議で報告する。
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第1回:ふんわり,そっと出せばいい(上)
成熟商品の代表格である掃除機。約550万台/年の安定した需要を家電各社がし烈に奪い合う。主戦場となっているのは,製品価格が5万円以上の高級機種市場。40万~50万台/年とされる高級機種市場の,おおよそ半分に当たる24万台を発売後1年で獲得した掃除機がある。三洋電機の「排気が少ない」掃除機である。工場…