まずは,ビタミンCが増える,あるいは減少を抑制できる野菜と,効果がない野菜を分類した。「効果があるのは,やはり葉物野菜に限られるな。ジャガイモやピーマン,トマトなど光を受ける部位が少ない野菜には,やっぱりほとんど効果がないや」。マイナスの影響については,ジャガイモに光を当てて芽が出ないか,皮が緑化しないかなどを調べた。「わずかに緑化するけど,目で見て分かるレベルではない。よし,問題ないぞ」。

 実験結果は平岡との定例打ち合わせで逐一報告した。もちろん平岡からは,新たな要求が次々と寄せられる。光の影響の確認も野菜だけにとどまらない。

「野菜室といっても,野菜以外の食品を入れるユーザーもいるはず。その点も調べましょう」

 飲料メーカーなどの複数の食品メーカーに問い合わせて,悪影響がないかを確認した。

ビタミンCを増やす冷蔵庫を実現した三菱電機静岡 製作所冷蔵庫製造部冷蔵庫先行開発グループマネージャーの平岡利枝氏。

 製品化時期が迫ってきたことで,LEDの搭載数や設置場所といった具体的な検討も進めなければならない。LEDの数を増やしたり野菜に近い位置に配置したりすれば効果は高まるが,製造コストや構造上の制約などが立ちはだかる。特に,今回の冷蔵庫はマイナー・チェンジのため,大きな設計変更は難しい。八木田の実験結果と平岡の設計検討結果を突き合わせて,最終的にLEDの数を3個とし,野菜室の奥にある冷気を運ぶ風路を構成する部品の一部を変更して設置することにした。

 こうしてデータを万全に整えた平岡らは,2004年春に再び開かれた幹部が集う大会議で自信をもって報告し,承認を得た。製品化への道筋が出来上がり,これで基礎的な検討はひと段落した。

花博で運命的な出合い

「ビタミン増量ってフレーズはどう?」