COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第5回:オレンジ色なら1.5倍に増えます(上)

河合 基伸=日経エレクトロニクス
2010/10/26 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2006年1月16日号 、pp.100-103 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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前編より続く
三菱電機住環境研究開発センター製品化技術開発部家事家電グループ専任の八木田清氏。同氏は,会社の近くのスーパーで野菜を購入して,光を当てる実験を繰り返した。

「ビタミンCを維持するだけではダメ。それでは今までと同じになってしまう。やるんだったら,必ず増やさないと…」

 鮮度を「保つ」から栄養を「増やす」へ――。冷蔵庫の競争軸を変える可能性を秘めた,光でビタミンCを増やす技術を目にして,三菱電機 静岡製作所 冷蔵庫製造部の平岡利枝は興奮気味に話した。

 ビタミンCを増やす技術が載った論文を発掘したのは,同社 住環境研究開発センターの八木田清である。社内にあった膨大な資料の中から,食品総合研究所が20年以上前にまとめた論文をつい先日見つけたのだ。興奮する平岡を前に,いつも冷静沈着な八木田は口を開いた。

八木田氏が実験結果を記した実験ノート。表紙には「食品保存」という文字が書かれている。

「ビタミンCが必ず増えるというわけではなく,条件によっては減少抑制にとどまる場合もあるようですね。家庭の冷蔵庫で再現できるかも不明です。つまり現時点では,ビタミンCを必ず増やせるとは断言できません」

 論文を見ると,確かにそうである。しかも製品化まで1年を切っており,検討を始めても間に合うかどうか…。だが,何とか実現したい。平岡は,可能性が少しでもあれば常に前向きに検討を進めてくれる八木田なら,きっとビタミンCを増やす条件を見つけてくれると考えていた。食品総合研究所という信頼できる機関のデータだったことも心強かった。

「とにかく,これでいきましょう。社内の調整は私に任せて。八木田さんは早速実験をお願いします」

「分かりました」

 2003年11月,平岡は光でビタミンCを増やす機能を2004年秋発売の冷蔵庫に搭載すべく,検討開始のゴーサインを出した。

根回しに走る

 検討開始を指示したものの,並み居る幹部らを前に製品へ搭載する機能を決める大会議は,すぐそこに迫っている。どう頑張っても,それまでに実験結果はそろわないだろう。

「ほとんど実験データのない中で,どうやって幹部らを説得するか…」

 平岡は幹部らに納得してもらえるように,光でビタミンCが増えるメカニズムを八木田から学んだ。

野菜に光を当てて,ビタミンCを測定するまでの手順。まず冷蔵庫に入れる前,または冷蔵庫に入れてから3日後に取り出した野菜を包丁で刻み,無色透明のメタリン酸とともに破砕機へ投入する。粉々になった野菜を紙のフィルタでろ過して繊維質を取り除き,さらに中空子膜でろ過して細かい異物を取り除く。こうして残った液体には,メタリン酸に溶け込んだアスコルビン酸,つまりビタミンCが含まれている。その量を測定する。
[画像のクリックで拡大表示]

「CO2とH2Oの存在下で,光の作用(光合成)によってC2H12O6(糖)ができます。さらに,C2H12O6がC6H8O6(ビタミンC)に変わるのです」

「なるほど。比較的分かりやすいかも。これなら会議でも理解してもらえるでしょう」

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